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<スズケンDIアワー> 平成16年12月2日放送内容より スズケン

DI実例集(147) 注射用抗生物質製剤等によるショック等に対する安全対策について


北里大学病院 薬剤部 主任
坂倉 智子

icon注射用抗菌薬における使用上の注意の改訂

 現在、世界各国で多くの抗菌薬が使用されています。抗菌薬は感染症治療に対して必要不可欠なものではありますが、一方でこれらの薬剤の投与により、まれにショックやアナフィラキシー様症状を起こすことが知られております。
 我が国においては従来、安全対策の一環として、注射用β-ラクタム系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬ならびに一部のペプチド系抗菌薬について、添付文書上に「事前に皮膚反応試験を実施することが望ましい」といった記載がなされ、これに従って投与前の皮内反応試験を実施するのが一般的でした。しかし今般、社団法人日本化学療法学会ならびに財団法人日本抗生物質学術協議会によって皮内反応の有用性に関する検証が行われ、皮内反応の中止及びそれに代わるショック等に対する安全対策についての提言がまとめられました。これを受け、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会による検討が行われた結果、平成16年9月に注射用抗生物質製剤全般において添付文書の使用上の注意改訂がなされ、合わせて適正使用に関する情報提供が行われましたので、ご紹介します。
 これらの使用上の注意改訂が行われることになった背景には、抗菌薬の投与前に皮膚反応試験を行う意義についての検証が、今まで十分になされていなかったことにあります。ショックやアナフィラキシー様症状などの予知目的で行われる皮内反応実施の有用性に関するエビデンスは存在しないこと、皮内反応が通常行われていない米国の方がβ-ラクタム系抗菌薬によるアナフィラキシーショックの発生頻度が低い傾向にあったこと、皮内反応が必要とされていないバンコマイシンによるアナフィラキシーショックの発生頻度はβ-ラクタム系抗菌薬における頻度と大きな差異がみられなかったこと、さらに皮内反応による陽性例は実際にアレルギーを有する例と比較して発生頻度が圧倒的に高く、治療に必要な抗菌薬の投与を受けられない事例が多いことなどが今回明らかとなりました。また、注射用β-ラクタム系抗菌薬の皮内反応は元来注射用製剤に含有されていた不純物に起因する即時型アレルギー反応を予知するために設定された試験であり、製剤の純度が著しく向上した今日においては皮内反応を実施する意義は薄れたと考えられることや、安全対策としてはこれらの皮膚反応試験に頼ることよりも、既往歴等について十分に問診を行うとともにショックなどを早期に発見し、早急な対応策をとることの方がより大切であるとの指摘がなされました。

icon「使用上の注意」の改訂

 これらの検討結果を踏まえ、今回の改訂では「使用上の注意」における「重要な基本的注意」の項から「事前に皮膚反応試験を実施することが望ましい」といった記載が削除されることとなりました。

(資料3:「使用上の注意の改定内容」)

 ただし、皮膚反応の実施を推奨しない理由は注射用抗生物質製剤によるショックやアナフィラキシー様症状の発現がなくなって安全となったためではなく、これらの症状の発現を確実に予知できる方法がないためであることから、事前に既往歴、特に抗菌薬によるアレルギー歴等について十分な問診を行うことや、投与の際は必ずショックなどに対する救急処置のとれる準備をしておくこと、さらに投与中、特に投与開始直後は患者の状態を注意深く観察することなどが新たに盛り込まれました。
 また、これらの使用上の注意改訂に合わせ、製薬企業は、一般的な皮膚反応試験の実施を廃止したことに伴うショックやアナフィラキシー様症状の発生頻度の推移を確認するため、当面3年間は製剤毎に副作用状況を厚生労働省に報告することとなりました。さらに、日本化学療法学会によって「抗菌薬投与に関連するアナフィラキシー対策のガイドライン」が作成され、適正使用に関する周知徹底を図ることとしました。

    
提供 : 株式会社スズケン

      

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