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<スズケンDIアワー> 平成16年12月30日放送内容より スズケン

ビスホスホネート系製剤 ゾレドロン酸水和剤


兵庫県立成人病センター乳腺科 部長
河野 範男

icon ビスホスホネート製剤の臨床応用

 癌骨転移治療薬として注目を集めておりますビスホスホネート製剤のうち、本日はおもに現在最も強力なビスホスホネートでありますゾレドロン酸、ゾレドロネートを中心にお話させていただきます。
 ビスホスホネートは骨表面に特異的に吸着し、いくつかの作用機序により破骨細胞の働きを抑制する薬剤です。ビスホスホネートは生理的に存在するピロリン酸のアナローグで、側鎖の違いにより窒素を含むもの含まないものに分類されます。ゾレドロン酸はインヴィトロの解析で初代のビスホスホネートであるエチドロネートに比べ 2万倍、さらに現在も汎用されております経口のクロドロネートの2000倍もの高い破骨細胞抑制を示すと考えられております。
 これらのビスホスホネートの破骨細胞抑制作用は破骨細胞の活性の認められる疾患、すなわち骨の代謝回転において破骨細胞の亢進を認める疾患への投与が試みられてまいりました。ビスホスホネートの有用性が検討された対象疾患は、1970年代にパジェット病、80年代に高Ca血症および骨粗鬆症に対し、1990年代には乳癌骨転移と多発性骨髄腫が、さらに2000年代に入り本日の話題のお薬でありますゾレドロン酸の登場により、前立腺癌、肺癌、腎癌等などのすべての固形癌の骨転移に対して試験が行われ、そのすべてに有用であることが証明され、2002年2月より米国FDAにて全ての癌骨転移に対し使用認可が得られております。

icon ビスホスホネートの作用機序

 前に述べましたように破骨細胞抑制剤でありますビスホスホネートの対象疾患は、骨粗鬆症、高カルシウム血症などが挙げられますが、本日は骨転移治療におけるビスホスホネートの有用性に的を絞ってお話させていただきます。ビスホスホネートが骨転移症例にたいして有効であることをご理解いただくために骨転移のメカニズムにつきお話させていただいた後、癌骨転移に対する海外ならびに日本で行われた試験結果につきお話をさせていただきます。
 近年、硬い組織である骨の組織でがん細胞が骨転移を成立させるためのメカニズムが理解されてまいりました。その中心的役割を演じている細胞は破骨細胞であるとされております。
 癌細胞が骨に転移を形成する為に、癌細胞は副甲状腺関連蛋白PTHrP、インターロイキン1、6などの破骨細胞活性化因子を産生放出いたします。骨転移巣周囲には多数の破骨細胞の動員を認め、骨吸収を促進します。破骨細胞により吸収された骨の間隙、空間に癌細胞は増殖の場を得ていることがわかります。さらに骨吸収により、骨に豊富に存在するTGF-β、IGF等の増殖因子が遊離され、癌細胞がさらに増殖し、より破骨細胞活性化因子が放出されるという悪循環が繰り返され癌骨転移巣はさらに広がり勢いを増してまいります。以上より骨転移成立には破骨細胞の活性化がきわめて重要です。
 このことは骨転移を起こしやすい培養癌細胞を用いた動物実験でビスホスホネートなどにより破骨細胞を抑制いたします と、骨転移は成立しないか抑制できることからも証明されております。

(資料3:「ビスホスホネートの作用機序」)

 ビスホスホネートの破骨細胞抑制機序は、骨表面のハイドロキシアパタイトに強い親和性を有するため骨表面に吸着し、破骨細胞に取り込まれ破骨細胞をアポトーシスに導くとされております。また破骨細胞の骨への吸着面である波状縁に変性を来たしたり、骨芽細胞による破骨細胞分化抑制因子であるosteoprotegerin(OPG)の産生を促進させ、破骨細胞分化を抑制する機序などが考えられております。

(資料4:「骨合併症」)

 この過剰な骨吸収により、癌骨転移症例ではSRE:Skeletal related Event骨関連事象と称される病的骨折、骨痛に対する放射線治療、外科的手術、さらに脊髄圧迫などQOL阻害因子である骨合併症を引き起こすことになります。
 前立腺癌骨転移のレントゲン像に代表される造骨性転移においても破骨細胞活性化による骨吸収、骨破壊は骨転移の共通の現象であるとされております。それは前立腺癌骨転移例において骨代謝マーカーのうち溶骨性のマーカーが上昇している事実が確認されており造骨性転移においても骨吸収は盛んに行われている査証とされております。また骨関連事象は癌種により、その発生頻度は若干の差はあるものの癌種を問わず骨転移共通事項である事からも裏づけられます。
 乳癌、甲状腺癌、前立腺癌の骨転移例は再発後の生存期間は2年3年と長期にわたります。これら骨関連事象の管理は日常生活、活動維持のため重要な問題であります。

    
提供 : 株式会社スズケン

      

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