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<スズケンDIアワー> 平成17年2月3日放送内容より スズケン

第25回日本臨床薬理学会年会を振り返って


静岡県立大学大学院薬学研究科臨床薬剤学教室 教授
中野 眞汎

icon 薬物療法の個別化について

 三つ目の路線は薬物療法の個別化の分野で「抗癌薬におけるTDM」のテーマで従来から個体差を見いだす方法として、血中濃度を測定することにより、患者の薬物動態を解明するTDMを抗癌薬について利用する面の進歩と展望について議論されました。
 午後には遺伝子解析が急速に発展する中で「Pharmacogenomic Test」のセッションにアメリカからファイザー社の担当者も加わって議論が進みました。
 薬物代謝における個体差が次々と明らかになりつつありますが、二日目の朝には「遺伝子多形解析の成果による臨床応用の新展開」をテーマに議論されました。

icon 特別講演から

 特別講演は国内から2名、外国から2名にお願いしました。熊本大学とアメリカ癌研究所でエイズ治療薬を研究しておられる満屋先生に「HIV感染症治療薬の臨床薬理」のテーマでご講演いただき、東京大学薬学研究科でトランスポーターの研究を続けておられる杉山先生に「薬物治療の最適化のためのトランスポーター研究」のテーマで、トランスポーターの遺伝子多型にもふれていただきました。薬物動態と薬理作用との関係を扱う分野が注目されていますが「新薬開発時の薬物動態学、薬動学及び模擬治験」というテーマでアメリカのイーライ・リリー社の女性研究者に解説していただきました。医療費が不足する時代に求められる薬剤経済学の考え方については「薬物治療の価値」というテーマでアリゾナ州立大学のBootman学部長に分りやすい説明をいただきました。
 ランチョンセミナーは二日とも、3つの会場で並行して行われ、欧州製薬団体連合会では、アンケート調査から得られた、日本での治験実施中に見られる問題点を発表していただきました。日本の医師の中には企業からの書類は持参を求める例が残っており、それに逐一対応するには企業の経済的負担が大きいだけに、受託者側の理解が求められました。治験は患者の協力を得て企業と医療者との共同作業であり、依頼者に必要以上の負担をかけることについては、受託者である医師が反省すべき時代になっていると考えられます。
 二日目の患者さんも参加なさったシンポジウムは一般公開セッションでしたが、それが終了した後、同じ会場で市民参加特別企画「夢の新薬募集;こんなくすりがあったらいいな」がおこなわれました。これは市民、県民に新薬開発について関心を寄せていただくために、日頃「こんなくすりがあると助かる」と考えておられる薬の種類を提案していただく企画です。すでに応募された候補医薬品について紹介し、出席いただいた5人のコメンテーターに、その提案についてコメントをいただき、新薬募集チームで審査して、優れた提案と認めた作品は表彰するというプログラムでした。このような地道な努力の積み重ねで、市民が新薬の必要性を理解し、治験に参加して下さる方向に進むことが期待されます。
 この年会では日本臨床薬理学会と日本小児臨床薬理学会を同日程、同会場で開催する試みがなされました。近い分野の学会同士の年会だけに、お互いのプログラムへ自由に出席が容易となり、相互に理解し合い、日常の治療さらに治験でも協力しやすい環境が育つことを望みます。
 なお、今回も年会の前日には日本学術会議薬理学研究連絡協議会との共催シンポジウムが、年会翌日には認定制度委員会主催の臨床薬理学講習会が開催されました他、第2回日中薬理・臨床薬理Joint Meetingも開催されて、国際交流のお手伝いもできましたことは喜ばしいことでありました。
 今回は、はからずも薬学出身者が年会を担当する機会をいただきましたので、会長講演では、熊本大学病院薬剤部在職中に医師と共同で開発した治療法のこと、GCP実施の時期には、文部省の職員採用内規にしばられてCRCさんとしては6時間パートしか採用を許されなかった話、ようやく8時間勤務者を採用していただいても3年期限の内規で、治療になれた職員を退職してもらわざるをえなかった話など、今日の定員配置に至るまでには、行政官の理解を得るのに苦労があったことも紹介させていただきました。

    
提供 : 株式会社スズケン

      

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