国立がんセンター中央病院
内科医長
白尾 國昭
転移性大腸癌の化学療法
この度、日本で承認された大腸癌治療薬、オキサリプラチンについて紹介させて頂きます。 本剤は、新規の白金錯体系抗悪性腫瘍剤であり、シスプラチンなどと同様、 DNA塩基との架橋形成によるDNA合成阻害、タンパク合成阻害と考えられています。 まず、本剤が進行・再発大腸癌に対する化学療法の中でどのように位置づけられているかについてお話させて頂きます。
2004年に、進行・再発大腸癌に対するオキサリプラチン、5-FU、ロイコボリンの併用療法に関する有名な第III相試験の結果が発表されました。これは初回治療例を対象として、当時の標準治療の一つである5-FU/LV/CPT-11とCPT-11+OxaliplatinおよびOxaliplatin+5-FU/LV、これら3群を比較したものです。Oxaliplatin+5-FU/LVにはいくつかの投与方法がありますが、ここで用いられた方法はFOLFOX4と呼ばれるものです。
この試験により、生存で FOLFOX4の優位性が示されました。ただし、ここで比較された5-FU/LV+CPT-11は、5-FUが持続で用いられる欧州型ではなく、5-FUの急速静注が用いられる米国型でありますので、注意が必要です。以上、この試験によりOxaliplatin+5-FU/LVは標準的治療法の一つと認知されるようになりました。
大腸癌化学療法は、 5-FU単剤の急速静注にはじまり、5-FU/LVの時代になり、さらに最近ではCPT-11やOxaliplatinなどの新規抗癌剤が登場してきました。これにより、進行・再発大腸癌の治療成績は急速に進歩してきました。現在、Oxaliplatin+5-FU/LVや5-FU/LV+CPT-11などが大腸癌の標準治療となっており、今回承認されたOxaliplatinは、大腸癌の治療に欠かせない薬剤となっています。
日本における臨床試験成績
次に日本での本剤の治療開発についてご紹介します。
まず日本人を対象に行われた Oxaliplatinの第I相試験の結果について紹介します。臨床では本剤を単剤で用いることはないのですが、欧米での初期開発では単剤の投与量は130mg/m2、3週毎の投与となっていました。これを基に日本でも同様の投与量での安全性が検討されました。その結果、本剤の特徴である末梢神経症状が全例に認められましたが、その程度は軽度でありました。また、それ以外の毒性も軽度であり、Oxaliplatinが欧米人同様日本人でも安全であることが確認されました。さらに薬物動態の検討も同時に行っておりますが、これも欧米人とほぼ同様であることが確認されました。
以上の結果をもとに、 5-FUに抵抗性を示した進行・再発大腸癌症例を対象に第II相試験が行われました。投与量は130mg/m2で、これを3週毎に繰り返す方法です。
まず、神経毒性についてですが、発現期間が 7日未満のgrade1、または7日以上のgrade2は、100%にみられています。しかし、機能障害は1例もみられませんでした。
血液毒性に関しては、 grade3が数%にみられますが、grade4はみられませんでした。
非血液毒性に関しては、これも食欲不振、悪心・嘔吐など grade3が数%にみられますが、grade4はみられませんでした。
奏効率は 8.8%であり、それほど高くはありませんが、5FU抵抗性症例を対象にした欧米の第二相試験とほぼ同じでした。
次の段階として、日本人を対象に Oxaliplatin+5-FU/LV併用の第I/II相試験を行っております。標準治療であるFOLFOX4は5-FUの急速静注と持続静注を組み合わせた方法ですが、日本では当時急速静注型の5-FU/LVしか使用できなかったため、本試験ではこれにOxaliplatinを加える方法が採用されました。
試験デザインは stepIで3剤の推奨用量を決定し、stepIIで患者さんの追加登録を行い、有害事象と有効性を検討するものでした。
本併用療法の推奨用量は、 Oxaliplatin 85mg/m2、5-FU 400mg/m2、 -LV 250mg/m2で、初回治療例を対象にした奏効率は64%と高く、毒性も許容されるものでした。
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