→ 番組表はこちら
→ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成17年6月23日放送内容より スズケン

肺動脈性肺高血圧症治療薬―ボセンタン水和物


浜松労災病院 院長
篠山 重威

icon 肺動脈性肺高血圧症の診断基準

 特発性肺高血圧症は明確な原因なく肺動脈圧が持続的に高値を示す状態を言います。診断基準は、心臓や呼吸器系の明らかな疾患を伴わずに平均肺動脈圧が安静時に25mmHg、運動時には30mmHg水銀柱を超える場合とされています。肺高血圧症患者の多くは進行性に右室不全を来たし、早期に死に至ります。
 特発性肺高血圧症の頻度は人口100万人に対して年1〜2人で、その6%は家族性に発生します。最近、TGF-β受容体のスーパーファミリーと特発性肺高血圧症の病因との関係が注目されています。
 特発性肺高血圧症は主に女性に多く、壮年期に発症し通常診断が確定してから数年以内に右心不全で死亡します。病変は特異的に肺細動脈に限局し内膜の線維化と中膜の肥厚を来たし、結果的に血管の閉塞、肺血管抵抗の上昇、あるいは肺高血圧症と右室負荷をもたらします。特発性肺高血圧症では内皮依存性の血管拡張物質、一酸化窒素(NO)の産生が障害され、内皮依存性の血管収縮物質、endothelinの産生が亢進している事が明らかにされています。
 強皮症、HIV感染症、肝疾患、ある種の食欲抑制薬の使用などが同様の病態を形成し、これら全てを押しなべて、特発性肺高血圧症と共に肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension, PAH)と分類されています。

(資料3:「ベースラインの血行動態を基準にして・・・」)

 過去数十年間にわたって、僅かながらPAHに対する新しい治療法が開発されて来ました。経口的治療薬としては、抗凝固薬、カルシウム拮抗薬、prostacyclinアナログまたはホスホジェステラーゼ阻害薬などがあります。しかし、これらは肺血管に選択的で無いためにその有効性には限度があり、多くの問題も提起されています。1990年代にepoprestenolの静脈内投与が導入され、生存率が大幅に改善しましたが、この治療には、高額である事、効果を維持するために必要な投与量が時間と共に増大する事、注入ポンプの故障、カテーテルによる感染あるいは血栓形成などの有害事象の頻発、この薬物自体が重大な副作用を有する事などの問題があります。吸入または経口投与が可能なepoprestenolの同族体が開発されていますが、その有効性はまだ充分には確認されていません。

icon Endothelin-1と肺高血圧症との関係

 血管内皮は局所の平滑筋細胞機能を調節して血管のトーヌスを正常に維持する上で重要な働きをすることはよく知られています。病的状態では血管内皮は血管収縮物質を遊離しますが、中でも強力な収縮作用を有するのがendothelin-1であります。endothelin-1はその他にも平滑筋に対してマイトジェンとしても作用します。最近、肺高血圧患者で血漿endothelin-1レベルが著しく高値であることから肺に於ける産生かクリアランスのいずれかに障害があることが示唆されました。更に、特発性肺高血圧では、静脈血に対して動脈血でその濃度が高値であったことから肺に於けるendothelin-1の産生亢進が肺血管抵抗上昇の本質的な機序であると考えられました。
 endothelin-1には、AとBの2つの受容体があります。ETA受容体が活性化されると血管収縮と平滑筋の増殖がもたらされ、ETB受容体が活性化されると一酸化窒素の産生と血管拡張が生じます。したがって、ETAに特異的なET受容体拮抗薬の開発がより望ましいように思われますが、ETB受容体によって副腎皮質からのaldosteroneの遊出が促進されることから、ETAおよびETBの両受容体を非選択的に遮断すればコラーゲン合成が阻害されてより大きな有効性がもたらされる可能性が考えられます。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

1 2 3 次項へ