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<スズケンDIアワー> 平成17年6月30日放送内容より スズケン

キャッスルマン病治療薬−トシリズマブ(遺伝子組み換え)−


大阪大学大学院生命機能研究科免疫制御学 教授
西本 憲弘

icon キャッスルマン病の病像

 キャッスルマン病の治療薬、トシリズマブ(遺伝子組み換え)についてお話ししたいと思います。トシリズマブは、わが国でオリジナルに開発されました治療用モノクローナル抗体であります。そして、本年(2005年)6月13日に、はじめてキャッスルマン病治療薬として承認、発売されました。
 まずキャッスルマン病についてご説明したいと思います。

(資料3:「キャッスルマン病患者のリンパ節の病理組織」)

 キャッスルマン病は非常にまれなリンパ増殖性疾患でございます。リンパ節の腫脹を特徴とし、そのリンパ節組織ではリンパ濾胞の過形成を認めます。キャッスルマン病は、そのリンパ節の組織の特徴から、形質細胞型、ならびにヒアリン血管型の2つに分けられます。形質細胞型のキャッスルマン病は、リンパ濾胞の過形成に加えて、濾胞間にたくさんの形質細胞が浸潤しております。一方、ヒアリン血管型は、濾胞間にヒアリン化した血管が多数認められます。さらに、形質細胞とヒアリン血管の両方の性質を持つ、混合型もあります。またキャッスルマン病の症状として、リンパ節の腫脹が全身に認められるタイプと、1ヵ所だけに認められるタイプがあります。全身に認められるものが、多中心型キャッスルマン病、あるいはmulticentric Castleman diseaseと呼ばれます。一方、1ヵ所だけリンパ節が腫れるタイプは、限局型、localized Castleman diseaseと呼ばれます。

(資料5:1990年から1999年の10年間にわが国で報告されたキャッスルマン病患者の内訳」)

 このキャッスルマン病は、先ほど非常にまれなリンパ増殖性疾患であると申し上げましたが、1990年から10年間にわが国で報告されたキャッスルマン病患者さんの総数は約560症例、そのうち約半数が全身のリンパ節が腫れる多中心型であり、残りの半数が限局型のキャッスルマン病でございます。多中心型のキャッスルマン病は、その組織型ではほとんどが形質細胞型のキャッスルマン病です。一方、限局型では多くがヒアリン血管型に分類されます。

icon キャッスルマン病の病態と従来の治療

 キャッスルマン病の症状として、リンパ節腫脹は全例に認められます。それ以外に、全身型のキャッスルマン病では、発熱・倦怠感・食欲不振・体重減少といった炎症症状に加えまして、皮疹・肝脾腫・腹水あるいは胸水・浮腫・神経障害・咳嗽といった症状が認められます。また検査所見におきましては、多くの患者さんで貧血が認められます。また血小板に関しましては、その数が減少する場合も増加する場合があります。炎症症状が強く、CRPの高値や、血沈の亢進が認められ、またアルブミン値が低下いたします。肝機能検査値の異常もしばしば認められますし、タンパク尿や、止血系の異常、さらには自己抗体の出現、甲状腺機能の低下など、さまざまな異常が認められます。
 キャッスルマン病に対する従来の治療は、限局型(1ヵ所だけ腫れる患者さん)では、手術で腫れたリンパ節を切除する、そうするとその症状は消失いたします。しかし全身型のキャッスルマン病では、ステロイドホルモンや抗炎症剤あるいは免疫抑制剤を用いることが多いです。しかし多くの患者さんでは治療に抵抗性を示し、ステロイドを使い続ける必要があります。

(資料10:「キャッスルマン病の病態におけるIL-6の関与」)

 これまでのところキャッスルマン病の根本的な原因はまだ明らかになっておりません。しかしキャッスルマン病の病態、さまざまな症状や検査値の異常は、インターロイキン6(IL-6)と呼ばれるサイトカインの過剰産生によって生じることがわかって参りました。キャッスルマン病においては、IL-6の過剰が高ガンマグロブリン血症を生じますし、IL-6によってリンパ球の臓器への浸潤や、血沈やCRPの亢進、低アルブミン血症、あるいは血小板の増加、リンパ節の血管新生が生じていることが報告されています。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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