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<スズケンDIアワー> 平成17年8月11日放送内容より スズケン

DI実例集(150)患者安全管理における薬剤師の役割


金沢大学臨床試験管理センター  助教授
古川 裕之

icon はじめに

 医療現場で発生するエラーに対する社会の関心は、2000年から急速に高まっています。これは、新聞やテレビなどでの医療事故に関する報道件数が2000年に急増したことによると思われます。
 エラー防止のためには、エラー事例から学ぶことが重要です。多くの医療機関では、院内で発生したエラー事例を自主的に報告するシステムを取り入れ、エラー事例の分析を行うとともに再発防止に向けた対策を行っています。
 また、公的なエラー報告システムとして、財団法人「日本医療機能評価機構」によるエラー事例の収集が行われています。報告されたエラー事例のうち重要と考えられるものに対しては、専門家による分析が加えられます。そして、報告された事例がデータベース化され、誰でも自由に利用することができます。

関連サイト:
医薬品、医療機器に関するヒヤリ・ハット事例情報(医薬品医療機器総合機構)
    http://msi.info.pmda.go.jp/hsearch/new_report.html

icon 報告エラーの分類

 これまで報告されたエラー事例を分類してみると、100件のエラー事例があれば、そのうちの25件は「注射・点滴」に関連したもの、13件は「与薬」(内服薬の投与)に関連したもの、2件が「医薬品投与が関連した転倒・転落」、そして10件が「調剤」に関連したもの、残りの1件が「処方」に関連したものとなります。

(資料4:「報告エラーの分類」)

 つまり、エラー報告全体の約半分が医薬品の投与に関連したもの。すなわちMedication Errorです。また、Medication Errorは、薬剤師が関与する調剤プロセスにおけるものに比べて、ベッドサイドで発生するものの方が4倍も多いことがわかります。このことは、Medication Errorから患者を守るためには、薬剤師は「調剤」に関連したエラーだけに注目するのではなく、ベッドサイドで発生する医師や看護師が関与するエラー(特に「注射・点滴」や「与薬」に関連するエラー)の防止に向けて取り組み必要があることを示しています。

icon Medication Errorを防止するための5つの「R」

 Medication Errorを防止するためには、5つの「R」を確認することが基本と言われています。すなわち、Right Patient、Right Drug、Right Dose(あるいはRight Rate)、Right Time、Right Routeの5つです。正しい患者かどうか、正しい医薬品かどうか、正しい投与量あるいは正しい投与速度かどうか、正しい投与時間かどうか、そして正しい投与経路かどうかの確認です。しかし、この5つの「R」を確認することの必要性は十分理解していたとしても、人間であるが故に、確認不足、注意不足や思い込みなどによるエラーはなくなりません。
  これまで報告されているMedication Error事例の原因を分析すると、ヒューマン・エラーを引き起こす原因として、名称・外観類似性、複数規格、表示方法など医薬品に関連するものだけでなく、倍量処方、投与量の単位省略など、医師の処方に関連するものがあげられます。

  (資料6:「アナタの常識はワタシの常識ではない」)

 特に、投与量の単位省略、例えば「時間20ミリ」という医師から看護師への指示は、「1時間当たり20ミリグラム投与」との医師の意図に反して、看護師は「1時間当たり20ミリリットル投与」と誤解することが少なくありません。つまり、単位を一部省略した指示では、医師から看護師への情報伝達が十分に行われません。情報伝達エラーは重要な問題です。これは、役割の違いや教育の違いによる意識・認識の差に基づくものであり、医師と看護師の双方が「アナタの常識は、ワタシの常識ではない」ことを十分認識する必要があります。


提供 : 株式会社スズケン

      

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