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<スズケンDIアワー> 平成17年9月15日放送内容より スズケン

口腔乾燥症改善薬 塩酸ピロカルピン(新剤型)


東京女子医科大学 放射線医学 主任教授
 三橋 紀夫

icon 頭頸部の放射線治療に伴う口腔乾燥症

 本日は、口腔乾燥症改善薬 塩酸ピロカルピン(商品名 サラジェン錠5mg)につきまして、ご紹介申し上げます。
 口腔乾燥症とひと言で申し上げましても、薬剤によるもの、糖尿病によるもの、加齢によるものなど、その原因は多岐にわたっています。今回ご紹介する塩酸ピロカルピンの適応は、「頭頸部の放射線治療に伴う口腔乾燥症」です。

(資料2:「頭頸部の放射線治療に伴う口腔感想症」)

 頭頸部腫瘍に対する放射線治療は発声や嚥下、さらには味覚や嗅覚といった日常生活にとって極めて重要な機能を温存することができるばかりでなく、美容上も顔面や頸部といった人の目に着きやすい部位に醜形を残すことなく治療することができるために、多くの場合、第一選択とされる治療法です。対象となる腫瘍としては、口腔癌、鼻腔癌、咽頭癌、喉頭癌、副鼻腔癌など多くの頭頸部悪性腫瘍が対象となり、良好な治療成績を収めています。ただし、残念なことに、放射線治療の主な副作用として、唾液腺の機能に障害を残してしまい、唾液分泌の低下による口腔乾燥症を引き起こす場合があります。唾液分泌の減少は放射線治療の開始直後から始まり、放射線治療が終了する頃には、元の状態の約10分の1ぐらいにまでに減少し、この減少は長期にわたり継続します。こうしたことから、数ある口腔乾燥症の中でも、放射線治療によって引き起こされる口腔乾燥症は、重症の口腔乾燥症として知られています。

icon 口腔乾燥症の治療の現状

 これまでに頭頸部の放射線治療に伴う口腔乾燥症に対する適応を持った薬剤としては、口腔内に噴霧する人工唾液が承認されています。しかし、その効果は一過性であり、十分な治療効果をあげるまでには至っていません。また、人工唾液の軽微な味を嫌う患者さんもいます。そのため、水やお茶などの水分補給による対症療法が治療の中心となっていますが、この水分補給も口腔の乾燥感を一時的に緩和することしかできませんし、高齢者では、夜間にトイレに起きる回数が増加し、不眠がちになると訴える患者さんも少なからずいます。唾液には、口腔の乾燥感を緩和する以外にも、多くの役割が存在しています。粘性タンパク質であるムチンによる粘膜保護作用、リゾチームやラクトフェリンによる抗菌作用、アミラーゼによる消化作用、各種電解質による口腔内のpHの緩衝作用、エナメル質の成分であるハイロドキシアパタイトによる再石灰化作用、そして味覚の媒体としての役割など、非常に多彩な役割があります。これらは唾液中に約40種類含まれている有機成分などの働きによると言われています。
 従って、口腔乾燥症は、口腔内の乾燥感自体やそれに伴う会話障害、食べものがパサつくための嚥下障害、さらに強度の口渇感による睡眠障害などによって、患者さんのQOLを著しく損なうばかりでなく、唾液の不足によって口腔内の衛生を維持することができず、感染症や虫歯を引き起こす原因となっています。
 このように放射線治療後の口腔内の環境は大きく変っているため、単なる水分補給だけでは日常生活の障害を改善するには至りません。求められているのは、生理的な唾液の分泌促進です。こうしたことから、生理的な唾液分泌を促す薬剤の登場が待ち望まれていたわけです。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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