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<スズケンDIアワー> 平成17年9月15日放送内容より スズケン

口腔乾燥症改善薬 塩酸ピロカルピン(新剤型)


東京女子医科大学 放射線医学 主任教授
三橋 紀夫

icon 塩酸ピロカルピンの特徴

 塩酸ピロカルピンは、唾液腺の腺房細胞に存在するムスカリンM3受容体に作用することによって、生理的な唾液分泌を促進します。まさに頭頸部の放射線治療に伴う口腔乾燥症治療薬として、待ち望まれていた本邦初の内服薬剤と言えます。
 ご存知のように、塩酸ピロカルピンは、外分泌を強力に促進する副交感神経の刺激薬剤として、古くから知られている薬剤です。当然のことながら唾液分泌促進作用以外にも、その副交感神経の刺激作用に起因する薬効をも発現する薬剤です。そこで重篤な虚血性心疾患、気管支喘息及び慢性閉塞性肺疾患、消化管や膀胱頸部の閉塞症、てんかん、パーキンソン、虹彩炎などを合併している患者さんでは本剤の投与が禁忌となっています。
 塩酸ピロカルピンの海外での使用状況をご紹介いたしますと、1994年に米国にて承認された後は、現在までに欧米の主要国をはじめとして、アジアでも韓国、台湾、香港、タイなど世界27カ国で既に承認されています。世界的には、頭頸部の放射線治療に伴う口腔乾燥症の治療薬として、確固たる地位を築いているグローバルな薬剤と言えます。今回、日本でも、世界で28番目に、ようやく使用することができるようになったわけです。

icon 塩酸ピロカルピンの効能・効果

 塩酸ピロカルピンの有効性と安全性について、ご紹介いたします。塩酸ピロカルピンの効能・効果は、「頭頸部の放射線治療に伴う口腔乾燥症状の改善」であります。すでに頭頸部領域への放射線治療を終了していて、慢性的な口腔乾燥症で悩んでいらっしゃる患者さんはもちろんのこと、放射線治療中の患者さんにも、処方が可能な薬剤です。
 用法・容量は、「通常、成人には塩酸ピロカルピンとして、1回5mgを1日3回、食後に経口投与する」となっています。この薬剤には、用量の適宜増減が設定されていません。これは、1回5mgで十二分に唾液分泌を促進することが可能であり、それ以上の増量は、副作用の増加を招くだけであるためです。
 この用法・用量に関連する使用上の注意として、「本剤の投与は空腹時を避け、食後30分以内とすること」とされていますが、これも本剤の副交感神経刺激作用に基づく消化管に対する副作用軽減を目的として設定されています。

icon 塩酸ピロカルピンの臨床成績

 塩酸ピロカルピンによる安静時唾液分泌量の推移を計測し、投与前と投与1時間後を比較すると、有意な唾液分泌の増加が52週間の長期にわたって認められています。

(資料7:「安静時唾液分泌量の推移」)

 また、この52週間の期間中に、薬効の低下は認められていません。だたし、この唾液分泌量の増加については注意が必要です。放射線治療による口腔乾燥症患者さんの安静時の10分間の唾液分泌量は、投与前では0.3〜0.4g、投与1時間後では約1gとなっています。健常成人男性では、通常3〜4g程度の安静時唾液分泌量が得られますので、投与前において通常の10分の1程度であった唾液分泌量を塩酸ピロカルピン投与により約3分の1まで回復させたことにはなりますが、正常レベルまでの回復は得られないということです。

(資料8:「臨床成績」)

 このように唾液分泌を正常レベルにまで回復させるまでには至らないながらも、患者さんの口腔乾燥感は投与後4週目から有意な改善が得られ、週を追うごとに良好な改善を示し、投与12週後には、約半数の患者さんにおいて、有意な改善が得られるとされています。このように、唾液の分泌を正常レベルまでとは言えないまでの、継続的に促進することによって、口腔粘膜の症状を改善し、これが最終的に患者さんの口腔乾燥感という自覚症状の改善へとつながると考えられています。

 

提供 : 株式会社スズケン

    

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