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<スズケンDIアワー> 平成17年9月22日放送内容より スズケン

乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)


藤田保健衛生大学小児科 教授
 浅野 喜造

icon はじめに

 本日は2006年4月から用いられる麻疹風疹混合生ワクチンを解説いたします。
 このワクチンはmeasles,rubellaの頭文字をとりMRワクチンと呼ばれ、麻疹、風疹の自然感染を予防するためのものです。現在、麻疹ワクチン、風疹ワクチンいずれも単独で用いられていますが、かつて日本では、この2つのワクチンにmunps(おたふくかぜ)ワクチンの入った3種類の混合生ワクチンとして用いられた時期もありました。MMRワクチンと呼ばれていたものです。ご存知のようにMMRワクチンの中のムンプスワクチンによる無菌性髄膜炎のため日本では使用中止になり、それ以降、各々が単独で使用されることになりました。なお世界的にみれば日本以外のほとんどの諸外国ではこのMMRワクチンが用いられています。
 さて本日のMRワクチンですが、麻疹、風疹の自然感染を予防するためのものですから、それぞれの疾患を簡単に説明いたします。

icon 麻疹の病像

 まず麻疹ですが、小児期の急性ウイルス性疾患で咳嗽などのカタル症状、高熱、発疹を特徴とし、伝染力が強く、強い免疫低下状態をきたし合併症も多く重症感の極めて強い疾患と言えます。

(資料2:「麻疹、measles」)

 RNAウイルスのパラミキソウイルス科モルビリウイルス属の麻疹ウイルスが原因になります。ウイルスは感受性者に経気道的に空気、飛沫感染し、家族内感染率は90%以上で、不顕性感染は少ないと言われています。免疫系細胞表面のウイルスリセプターであるSLAM(signaling lymphocytic activation molecule:CD150とも言います)を介して感染、免疫系細胞の破壊の結果、強い細胞性免疫低下状態を来すのが特徴になります。
 10〜12日の潜伏期の後、発熱、カタル症状で発症し、病期はカタル期(前駆期)、発疹期、回復期の3期に分けます。強い咳嗽と共に熱は約1週間続き、紅色の発疹は回復期に褐色の色素沈着を残し治癒します。カタル期後半では頬粘膜の臼歯に面する部位に紅軍を伴う小さな白斑が出現し、コプリック斑と呼ばれます。症例の90%以上に認められ、診断的価値が高いと言われています。小児期の感染症の中では合併症を併発しなくても極めて重症感の強い疾患ということができます。

(資料3:「麻疹ウイルス感染に伴う免疫抑制で・・・」)

 合併症・続発症は強い免疫低下状態になるための細菌の二次感染によるものが多いのですが、麻疹ウイルスそのものによる合併症もあります。中耳炎、肺炎、喉頭炎などが多く、重篤で予後不良のものに脳炎があります。麻疹患者の1000例に1例の頻度で見られ、二次性脳炎と考えられています。15%が死亡、25%に後遺症を残します。
 麻疹ウイルスには特効薬がなく、予防のためにワクチン接種を徹底させることが大切になります。
 日本では麻疹の自然感染が先進国の中では飛びぬけて多かったのですが、ここ数年、多くの団体による「はしか0作戦」が功を奏し、1歳になったら直ちに麻疹ワクチン接種をすることが徹底されてきたため、自然麻疹はかなり減少してきました。最近では日常診療で麻疹を見ることはほとんどなくなってきました。さらにこの運動を徹底し麻疹の排除に向けての努力を怠らないことが重要になります。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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