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<スズケンDIアワー> 平成17年10月6日放送内容より スズケン

PET用診断薬−フルオロデオキシグルコース


獨協医科大学病院PETセンター センター長
村上 康二

icon PET検査の保険適用拡大を目指して

 次にPET検査の現状ですが、今までのPET施設はFDGを院内で合成するために、サイクロトロン、自動合成装置といった大がかりな設備が必要ですが、しかし、FDGの半減期は110分あるため、工場から近くの距離であれば運搬が可能です。そこで今年の秋から医薬品メーカーによりFDGの供給が今年9月に開始されました。。そうなれば院内にカメラだけを設置すればPET検査が可能になり、病院の負担が減ります。
 一方、このようにいろいろな悪性腫瘍の診断に有用性が高いFDG-PET検査ですが、まだ全てのがんに保険が適用になったわけではありません。現在、我が国での保険適用疾患は、
1) てんかん
2) 虚血性心疾患
3) 肺癌
4) 乳がん
5) 大腸癌
6) 頭頚部癌
7) 脳腫瘍
8) 膵がん
9) 悪性リンパ種
10) 転移性肝癌
11) 原発不明癌
12) 悪性黒色腫
の12疾患です。このうち、てんかんと心疾患を除く10種類が腫瘍PETに関する疾患ですが、実際にはPETはこれらの疾患以外、たとえば食道癌や婦人科がんなど多くの癌腫に対して有効です。したがって、現在、これらの疾患も保険適用になるように厚生労働省に適用拡大を申請中です。
 ところで、昨今の情勢を考えると、コストも医療を論じるうえで不可欠な要素といえます。本邦ではFDG-PET検査は保険点数が7,500点であり、通常はこの3割を患者さんが支払うことになります。一方、アメリカでは保険会社により一定ではないものの約20万円、またドイツでも21万円となっており、主要国の中でも日本のPET検査費用の安さが目立ちます。7万5千円という金額は決して安いものではありませんが、検査をやるための設備・手間を考えると日本の費用は決して高くはないということになります。

icon 「機能診断」の時代に向って

 最後にPET検査の将来についてお話ししましょう。現在最も広く行われている画像診断は、X線CTです。CTも進歩しており、現在の空間分解能、つまり小さいものを見分ける性能は0.1mmに達しています。しかし、CTだけでは1cmの腫瘍も見分けることができないことも事実です。これはなぜかというと、コントラスト分解能、つまり「正常組織と異常組織を見分ける性能」がCTには不足しているからです。PETを含めた核医学検査は空間分解能は不十分ですが、コントラスト分解能では他の検査に比べもっとも優れているものです。
 今後は機能診断の研究や開発が進むでしょうが、PETはその中心を担う重要な検査法になるものと思われます。特に近年の分子生物学の著しい進歩は今後創薬分野にも応用されていくものと考えられ、新しい放射性医薬品の開発には有利な状況です。たとえば造影剤の投与量を比較してみると、X線CTで投与されるヨード造影剤は約100g、MRI造影剤は約10g、それに対しまして核医学検査で投与される薬剤はわずか数μgからpgの単位です。PETを含めた核医学検査はこのように他の画像診断に比べてずば抜けた感度を持っているため、分子生物学を応用した新しい診断用薬剤が今後は無限に開発される可能性を秘めています。今後の画像診断に期待されるのは、これら細胞の機能異常を特異的に、かつ敏感に検出することであり、その意味で21世紀の画像診断はFDG-PETを代表とした「機能診断」の時代といって良いかもしれません。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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