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<スズケンDIアワー> 平成17年12月8日放送内容より スズケン

糸球体濾過量測定薬剤イヌリード


大阪大学 名誉教授
折田 義正

icon 糸球体濾過量とは

 本日はイヌリードについてお話します。イヌリードは、国際的に標準法とされている糸球体濾過量測定に用いられるイヌリンを、わが国で初めて点滴静脈注射用製剤としたもので、このたび厚生労働省より製造許可、臨床使用が認められました。
  糸球体濾過量とは、人の腎臓の糸球体で1分間に漉し出される液量のことです。腎臓の働きには多くのものがありますが、その中の最も基礎的なものが糸球体濾過量です。糸球体濾過量は、健康な若い人では1分間に約100mLですが、腎臓が冒されれば当然減少します。1分間30mL以下は重症の腎不全で、さらに1分間10mL以下は人工透析療法が必要となることはご存知のとおりです。昨年末、わが国の長期人工透析療法患者は約25万人に達しました。これを増やさない事が腎臓病の医療に携わる者の任務です。

icon 糸球体濾過量測定法の歴史

 このためには、正確に糸球体濾過量を測定して、的確な治療法を適切な時期に行う必要があります。

(資料1:「Richard,Shannon,SmithのGFR物質の定義」)

 すでに、1935年から1943年頃には、欧米の研究者によってイヌリンクリアランスが正確な糸球体濾過量を示す事が報告されました。しかし、その頃、わが国は第2次世界大戦のさなかにあり、外国文献が手に入らず、終戦後、やっと情報が入手できても、戦後のわが国の混乱した状態では、イヌリンを精製・製剤化する事は不可能で、また、国・製薬企業・患者ともに、この経済的負担に耐えることはできなかったことは当然です。そこで、わが国の腎臓学の先達、大島研三先生らは、外国で報告のあったチオ硫酸ナトリウムを糸球体濾過量とみなしました。しかし、チオ硫酸ナトリウムは、尿細管排泄があるため、イヌリンクリアランスより値が大きくなることが分かり、さらにチオ硫酸ナトリウムの測定法は、現代の臨床検査部の武器であるオートアナライザーに応用できないため、現在では、ほとんど見捨てられています。
 これに代わってクレアチニンのクリアランスが糸球体濾過量として用いられるようになりました。これは検査薬を静脈注射で体に入れずに、また、クレアチニンがオートアナライザーで容易に測定できるためですが、いくつかの欠点はすでに指摘されています。その第1点はクレアチニンが尿細管から排泄されるため、クレアチニンクリアランスは、イヌリンクリアランスより高くなり、患者さんの腎機能を誤って実際より良く見てしまうことです。第2点として、クレアチニンは筋肉のクレアチンより作られるため、同じ人でも、病気などにより筋肉量が減少すると、クリアランスも血液濃度も低下し、正確な糸球体濾過量測定を誤ります。第3点としては、クレアチニンの測定法が年とともに改良され、血液中のクレアチニン濃度の基準範囲が次第に低くなり、クリアランスは大きくなり、今まで以上に糸球体濾過量が、誤って良く評価されることです。また、血液のクレアチニン濃度の基準範囲が変更されますと、10年以上の長い経過の腎臓病患者さんの腎機能のフォローができにくくなります。これらの欠点は、1980年頃から米国で指摘され、米国では、各種の放射化された薬品が正確な糸球体濾過量の測定に用いられています。この結果、クレアチニンクリアランスが1分間40mL未満の患者では、クレアチニンクリアランスは正しい糸球体濾過量の約1.9倍になる事が報告され、クレアチニンクリアランスを使うことは、患者の重症度を見逃すとして警告が発せられました。しかし、わが国では、放射化された薬品の一般的な使用は簡単でないことはご存知の通りです。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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