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<スズケンDIアワー> 平成17年12月22日放送内容より スズケン

経口男性型脱毛症治療薬フィナステリド


東京医科大学皮膚科 教授
坪井 良治

icon 男性型脱毛症の機序

 平成17年12月、初めての経口男性型脱毛症治療薬フィナステリドが発売になりました。そこで本日は、男性型脱毛症の診断のお話を交えながらフィナステリドの使用方法についてお話しさせていただきます。
 男性型脱毛症は壮年性脱毛、若ハゲ、薄毛とも呼ばれ、厳密には疾患ではありませんが、20代後半から30代、40代にかけての男性の前頭部と頭頂部の頭髪が徐々に薄くなり、最終的にはこの部分の頭髪が完全に消失する現象です。ヒトの頭髪にはヘアサイクル(毛の成長の周期)があって、1本1本の毛は2年から6年間、1ヶ月に1cmの割合で伸び続けます。そして脱落し、また新しい毛が生えてきます。ところが男性型脱毛症では、太くて長い毛が、ヘアサイクルが短くなるために、徐々に細く短い毛に生え変わっていきます。これを軟毛化現象とよんでいます。
 男性型脱毛症の診断にはHamilton/Norwoodなどの分類がありますが、細かく覚える必要はありません。前頭部の生え際が徐々に後退し、頭頂部のつむじの周りの毛が徐々に薄くなるパターンと程度によって診断します。特異な脱毛分布を示すことが特徴で、頭全体の毛が薄くなるなり白髪が増える、年齢に伴う生理的な脱毛とは異なります。日本人男性における男性型脱毛症の頻度は、軽症例も含めると30%程度と言われていますが、重症の人はそれほど多くなく、20代、30代の10%未満です。男性型脱毛症の診断はみただけで、容易に判断できますが、稀には、全身疾患に伴う脱毛や薬剤による脱毛、円形脱毛症の特殊型との鑑別が必要になることがあります。男性型脱毛症の診断に役立つ血液検査や画像検査は特にありません。血液中の男性ホルモン量も正常です。

(資料2)

 さて、男性型脱毛症の原因として、男性ホルモンが重要な役割を果たしていることは間違いありません。男性ホルモンは一般的にヒゲや胸毛などを濃くする方向に働きますが、なぜか高等動物のヒトにおいては、前頭部と頭頂部の毛に対してだけ逆に働き、頭髪が薄くなる軟毛化現象を引き起こします。血液中の男性ホルモンは毛包の毛乳頭と呼ばれる部位でtestosteroneがdihydrotestosterone(DHT)と呼ばれる活性化された男性ホルモンに変換され、男性ホルモン受容体に結合します。このDHTの変換に関わる酵素が5α-reductase type 2で、この酵素の活性を特異的に阻害するのが、本日お話しするフィナステリドです。フィナステリドは合成して得られたステロイド骨格を有する酵素阻害薬ですが、男性ホルモン作用や受容体に対する作用はありません。DHTは外性器の発育を促進しますが、成人においては前立腺肥大や、ヒゲあるいは胸毛を濃くし、前頭部と頭頂部の毛を薄くする方向に働きます。一方、精子産生、性欲、性機能などはtestosteroneの直接作用であり、DHTの作用でないことがポイントです。つまり、フィナステリドを大人が内服した時は、前立腺や毛包に対してだけ作用があらわれます。DHTは男性ホルモン受容体に結合して、前頭部と頭頂部だけで脱毛を促進させますが、その先のさらに詳しい機序については分かっていません。

 

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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