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<スズケンDIアワー> 平成18年1月12日放送内容より スズケン

α-グルコシダーゼ阻害薬 ミグリトール


順天堂大学内科 教授
河盛 隆造

icon 健常人における“糖のながれ”

 今、本邦で劇的に増加している2型糖尿病の外来治療が大きく様変わりした、と実感しておられると存じます。
 空腹時血糖値が高い、グリコヘモグロビン値が高ければ、コントロールを開始するのは当然のことです。
 空腹時血糖値は正常域にある、しかし食後血糖応答が異常に高くなっている、といったステージの糖尿病もきちんと治療することが必要なのです。この状態を放置しますと、糖尿病が確実に進行し、空腹時高血糖を呈するにいたったり、一部の例ではこのステージに動脈硬化症が進展することがあるからなのです。
 2型糖尿病の発症機序は一例一例で、かつ各時点で病態は刻々と変動しますから、病態生理を的確に把握することが介入手段を決定する上で必須となります。

(資料1:「健常人における糖のながれ」)

 経口摂取された炭水化物が十二指腸でブドウ糖と果糖に変換され、門脈から流入し全身細胞のエネルギーとして利用されていくありさまを私は“糖のながれ”と名付けています。血糖値は“糖のながれ”の結果です。“糖のながれ”を規定しているのが、インスリン分泌動態と全身細胞のインスリン感受性の程度にあることはいうまでもありません。
 食間・夜間にはインスリン基礎分泌により制御された肝臓・糖放出率と、基礎分泌により刺激された全身細胞での糖取り込み率がマッチして、血糖値は正常域に保持されます。
 一方、食事を摂ると、十二指腸より門脈への急速なブドウ糖の流入による血糖値の上昇→瞬時のインスリン分泌亢進→門脈インスリンレベル上昇による肝臓・糖放出率の低下、肝臓の糖の取り込み率亢進→肝臓を通り抜けたブドウ糖による末梢血中ブドウ糖濃度の上昇→筋肉・脂肪組織の糖取り込み率の上昇→そして血糖値が前値に復する、このような機構が働きます。
 すなわち、インスリン分泌とその作用を受ける臓器のみごとな協調作用により、血糖応答がfine tuningされていることになります。この機構のいずれに乱れが生じても耐糖能障害が生じることになります。

icon 2型糖尿病における“糖のながれ”

(資料2:「健常人における糖のながれと2型糖尿病における糖のながれ」)

 朝食前空腹時血糖値が10時間以上の絶食にもかかわらず、110mg/dL以上になっているのは、肝臓の糖の放出率が全身の糖の利用率を上回る結果が継続した状態であります。その機序として圧倒的に多いのは、内因性基礎インスリン分泌率の低下が挙げられます。しかし、たとえインスリン分泌が低下していないとしても、インスリンによる肝臓・糖放出率が抑制されないこと、さらに、あるいは、これに加えてインスリンによる筋肉・糖取り込み率が高まらないこと、これらが重なった際には、インスリンの働きが低下しているため血糖値が上昇いたします。
 一方、ブドウ糖経口負荷後、あるいは食後の血糖値レベルの規定因子はいったい何でしょうか。食前血糖値のレベルに無関係に、食後には必ず血糖値は上昇します。食事中の炭水化物がアミラーゼやα-グルコシダーゼにより急速にブドウ糖と果糖に変換され吸収され、門脈に流入します。その際、1、インスリン分泌パターン、インスリン分泌量、による肝臓へのインスリンの供給。第2点として、肝臓が流入したブドウ糖をどの程度取り込むか。第3点、肝臓からの糖放出率が素早く抑制されるか。この3点が食後血糖値を規定します。具体的には肝臓を通り抜けて全身に廻ったブドウ糖量が食後血糖値を高めることになります。すなわち、食後に肝臓にどの程度ブドウ糖を取り込ませるかが食後血糖応答制御のキーになります。両親いずれかが2型糖尿病になっている、このような方では生まれた時から、「食後血糖値が上昇した際、瞬時のインスリン分泌が見られない、遅延して分泌が見られる、さらに分泌量も少ない」という2型糖尿病の遺伝表現型を有している場合が非常に多いのです。このような例において、僅かにインスリンの働きを低下させること、例えば肥満や運動不足が2型糖尿病の発症の引き金になる、と考えられます。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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