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<スズケンDIアワー> 平成18年2月9日放送内容より スズケン

統合失調症治療薬―アリピプラゾール


昭和大学精神医学 教授
上島 国利

icon 統合失調症の治療の現況

 今年(2006年)1月23日に厚生労働省から製造販売承認を取得した統合失調症の治療薬アリピプラゾールについてご紹介させていただきます。アリピプラゾールは、新規の抗精神病薬であり、統合失調症がその適応疾患でありますが、まず統合失調症の治療の現況について申し上げます。
 統合失調症は、人種や民族、性別を問わず人口の約0.8%、つまり130人に1人の割合で罹患するとも言われ、主に思春期から成人前期に発病する脳の疾患です。脳内のドパミンD2受容体を遮断する作用を持つ抗精神病薬が有効なことから、ドパミン神経の異常な活動が推測されておりますが、なぜ異常な活動が起るかについては不明です。
 発症の原因ですが、最近では、生物的原因による病的素因ないし中枢神経機能の脆弱性があり、これが心理社会的ストレス、たとえば環境因とか心因などですが、これを誘因として症状を形成すると考える脆弱性ストレスモデルが有力です。  

icon 統合失調症治療の変遷

 治療は主として、抗精神病薬による薬物療法と、心理社会的治療によって行われています。抗精神病薬としては、1952年にクロルプロマジンが、1958年には、ハロぺリドールが導入されました。他にも多くの抗精神病薬が登場しましたが、この両薬剤が代表的な定型(第一世代)の抗精神病薬で、幻覚・妄想、思考減裂などの陽性症状には効果がありましたが、感情鈍麻、思考貧困、意欲欠如などの陰性症状には、十分な薬効がありませんでした。
 また、これら薬剤には、錐体外路症状や、高プロラクチン血症、自律神経症状などの副作用が出現し、使い難く、新しい薬の登場が待たれていました。ようやく1996年にリスぺリドン、2000年にオランザピン、クエチアピン、ぺロスピンといった第二世代の非定型抗精神病薬が臨床使用可能となりました。これらの薬剤は、抗ドパミンD2と抗セロトニン5HT2Aのバランスにより、臨床効果が増強され、陰性症状にも効果があり、錐体外路症状の出現も少なくなっていますが、肥満、代謝異常、高プロラクチン血症などの副作用も一部の薬剤では見られています。

icon アリピプラゾールの薬物動態

 このような状況のもと、新しい抗精神病薬アリピプラゾールが登場してまいりました。この薬剤は、1988年に合成発見された後、基礎試験・臨床試験が実施され、この2006年1月23日に統合失調症の効能で厚生労働省から製造販売承認を取得したばかりで、この春には発売予定と聞いています。既にこの薬剤は、アメリカやヨーロッパ各国、韓国をはじめとするアジア諸国など40以上の国で発売されています。

(資料1:「Aripiprazol “Dopamine-system Stabilizer”」)

 この薬剤の薬理作用ですが、1970年代後半に、統合失調症の治療薬開発における新しい着眼点として、シナプス前部位ドパミン自己受容体アゴニストの研究が開始され、その研究をシナプス前部位ドパミン受容体およびシナプス後部位ドパミンD2受容体に対する新しいドパミン神経伝達調整作用薬の研究へと発展させました。その成果として、ドパミンD2受容体部分アゴニスト作用を持つ化合物として、アリピプラゾールが見い出されました。既存の定型および非定型抗精神病薬が生体のドパミン作動性神経伝達の活動状態に関わりなく、ドパミンD2受容体に対して常にアンタゴニストであるのに対し、アリピプラゾールは、D2受容体部分アゴニストとしての作用を持つため、生体のドパミン作動性神経伝達が亢進している場合には、ドパミンD2受容体に対して、機能的なアンタゴニストとして、ドパミン作動性神経伝達を抑制します。
 一方、ドパミン作動性神経伝達が低下している場合には、ドパミンD2受容体に対して機能的なアゴニストとしてドパミン作動性神経伝達を促進します。即ち、アリピプラゾールは、ドパミンの神経伝達が過剰な場合には、適切なレベルまで低下させ、逆に低下しすぎている場合には、ドパミン神経伝達を適正レベルまで回復させるような、ドパミン神経の働きを適正化・正常化し、安定化する働きがあり、ドパミンシステムのスタビライザーと呼ばれています。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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