西葛西・井上眼科病院 院長
宮永 嘉隆
トシル酸トスフロキサシンの臨床試験計画
トシル酸トスフロキサシン点眼液は1998年から開発が開始され、2004年6月に承認申請が出されました。そして、本年(2006年)1月23日に製造承認となった抗菌点眼薬で、4月から販売される予定です。
本薬の活性成分のトシル酸トスフロキサシンは、1990年より経口薬として臨床使用されているニューキノロン薬であります。グラム陽性菌、グラム陰性菌に対して幅広い抗菌スペクトルと、強い抗菌力を示すことが特徴です。特に従来のニューキノロン薬の抗菌力が比較的弱かったブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌及び緑膿菌に対しても、強い抗菌力を示していることが特徴です。また、本薬は、従来のニューキノロン薬で十分な効果が期待できなかった、クラミジア結膜炎にも優れた効果が期待され、その点眼薬としての開発が期待されました。 さて、本薬開発の臨床試験は、1998年から開始されました。本薬の開発は従来の抗菌点眼薬に比べて臨床試験で3つの特徴を有しております。まず、第一にプラセボとの比較試験を実施し、薬効とエンドポイントを確認してから、第V相試験を実施したことであります。次に、国内では初めての新生児を含む小児を対象とした臨床試験を行い、有効性と安全性を確認したことであります。そしてもう一つ、抗菌力が強いという特徴を確認するために、従来の点眼液で十分な治療効果が期待できなかったクラミジア結膜炎に対する有効性を確認したことであります。
これは、ニューキノロン薬の主な外眼部感染症起因菌に対する抗菌力を比較したものです。外側にいくほど、抗菌力が強いことを意味します。これから分かりますように、本薬は、これらの菌に対して最も強い抗菌力を示しています。
これは、各臨床試験の流れと試験の目的を示したものです。現在、市販されている抗菌薬との位置づけを確認し、薬剤の特徴を確認する試験パッケージになっております。小児の試験においては中間解析を行いつつ、対象年齢を少しずつ引き下げ、最終的に新生児の有効性安全性を確認しています。
実際に実施された臨床試験では先ほどの3試験に加えて長期の頻回点眼、あるいは小児への臨床試験に備えて頻回反復の臨床薬理試験を実施しています。また、被検者の年齢は、試験の進行に合わせて中間解析等を実施しながら、段階毎に対象年齢を引き下げ、非常に慎重に検討しながら、最終的に新生児までの有効性と安全性を確認しています。
これは、最終的に承認なった内容です。クラミジアに関しては、症例数が少なかった事と、PCR法での菌消失時期が明確でなかったということで、今回の承認は見送られました。しかし、この系統の薬剤で初めての承認事項である、用法・用量欄に小児の用法・用量が記載されたことは、他の抗菌点眼薬にないことです。また、添付文書の使用上の注意に、小児は成人に比べて治療期間が短い場合もあるので、気をつけなさいとの記述が入り、新生児の治験症例数が明示されました。
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