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<スズケンDIアワー> 平成18年3月9日放送内容より スズケン

低ゴナドトロピン性精巣機能低下症に対する


帝京大学泌尿器科 助教授
岡田 弘

icon 低ゴナドトロピン性精巣機能低下症の病態と治療

 本日は、低ゴナドトロピン性精巣機能低下症患者に対する、新しい内分泌療法について、最近の本邦での臨床試験結果を踏まえてお話させていただきます。
 男性の低ゴナドトロピン性精巣機能低下症は、視床下部ないしは下垂体の障害により、卵胞刺激ホルモンであるFSHと黄体化ホルモンであるLHの分泌が低下することにより、低テストステロン血症を来す比較的まれな疾患です。本邦での頻度は、約1万人に1人と推定されています。低ゴナドトロピン性精巣機能低下症患者では、血中のテストステロン濃度の低下を来すわけですが、その症状は発症年齢により様々な病態を呈します。精巣機能低下が思春期以前であれば、二次性徴発来の欠如を来し、思春期以降であれば体形の女性化や骨粗鬆症や男性不妊症を呈することになります。低ゴナドトロピン性精巣機能低下症の原因は、間脳の障害があるものにKallmann症候群があり、下垂体に原因があるものに、下垂体腫瘍やその手術による低ゴナドトロピン血症があります。この場合には通常ゴナドトロピンのみでなく、下垂体前葉ホルモンが全て低下する汎下垂体機能低下症を来すため、小児期から低身長や甲状腺機能低下症・副腎不全のため。性徴ホルモンや甲状腺ホルモン・副腎皮質ホルモンの補充療法を受けている症例が、生殖年齢になり精子形成の導入のために、泌尿器内分泌外来を受診することになります。
 治療法は、間脳・下垂体・精巣系の最終産物であるテストステロンを補充する治療法と、低下しているゴナドトロピンを補充する方法があります。テストステロン補充療法は、2次性徴の発現・性欲亢進・骨粗鬆症の予防には有用でありますが、外因性テストステロンにより間脳・下垂体・精巣系におけるネガティブフィードバック機構が働き、ゴナドトロピン分泌は抑制され、精巣における精子形成は抑制されることになります。従って、挙児希望のある低ゴナドトロピン性精巣機能低下症患者には適応がありません。挙児希望の低ゴナドトロピン性精巣機能低下患者においては、精子形成を誘発するためにゴナドトロピン療法が行われます。視床下部に障害のある低ゴナドトロピン性精巣機能低下症患者の場合は、不足しているホルモンはゴナドトロピン放出ホルモンでありますから、このゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)補充が理想的であります。しかし、GnRH分泌のパルスパターンを再現するために小型の携帯注入ポンプを装着使用しなければならないため、患者にとって治療のコンプライアンスが悪く、実際的ではありません。現在、小児例のごく一部で短期間行われているのみで、成人例では行われていません。従って本邦における低ゴナドトロピン性精巣機能低下症患者における、治療の第一選択は、LHの代用としてhCGを、FSHの代用としてhMGを用いる、いわゆるhCG-hMG療法であります。

icon hMG製剤の問題点とFSH製剤の特徴

 しかし、尿由来FSH製剤であるhMGは様々な問題を内包しています。すなわち、
1、 LH及びFSHをはじめ様々な夾雑物を含有していること。
2、 製剤の定量測定にバイオアッセイを用いているために、同じ用量のhMG製剤を用いた場合でもバイアルに含有されている薬剤量にバラツキがあるため、治療効果がバッチごとに異なり一定でないこと。
3、 製品の原材料がヒトの尿であり、最近の体外受精を中心とした生殖補助医療の普及のため、需要が急速に高まり原材料不足が起っていること。
現在では材料の尿がヨーロッパ・アジア・南米諸国から集められているため、供給者のクオリティコントロールが利かないために、クロイツェルフェルトヤコブ病のような病原微生物の感染のある尿が原料として集められる可能性があり、病原微生物が混入した場合は、全製品が使用不可能となり、急激な供給不足に陥る可能性があります。
 これに対して、遺伝子組換え型FSH製剤(recombinant human FSH)は、以下のような特徴を有しています。
1、 hMGに比して純度が高い。
2、 夾雑部が少なく抗原性も低いため、長期使用でも抗体産生の可能性が低いこと。
3、 製剤としてバッチごとのバラツキが殆どなく、治療効果が一定であること。
4、 生物製剤で無いため、病原微生物の混入の可能性が無いこと。
 以上のことを踏まえますと、低ゴナドトロピン性精巣機能低下症患者の治療は、遺伝子組換え型ヒトFSH製剤を用いるのが妥当であると考えられます。そこで、低ゴナドトロピン性精巣機能低下症患者に対する、遺伝子組換え型ヒトFSH製剤とhCG製剤の併用療法の臨床試験が、本邦では2001年に計画され2005年に終了しました。遺伝子組換え型ヒトFSH製剤としてフォリトロピンアルファを用い、hCG製剤としてプロファシーを用いて、多施設オープン試験として行われた臨床試験成績を以下にお示しいたします。 

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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