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<スズケンDIアワー> 平成18年5月18日放送内容より スズケン

抗うつ薬(SSRI)?セルトラリン?


東京女子医科大学精神医学
教授 石郷岡 純

icon セルトラリンの作用機序

 本日は、間もなく承認されて発売されることになりました新しい抗うつ薬セルトラリンについて、主に日本の臨床試験の成績を中心に説明したいと思います。

(「セルトラリンの作用機序」)

 セルトラリンは選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRIの一つでありまして、この図に示されておりますように、シナプスにおけますセロトニンの再取り込みを阻害することによって抗うつ効果を発揮するというふうに考えられています。選択性が高いため、他の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンに対する取り込み阻害作用はほとんどありません。また受容体に対する結合親和性も弱いため、副作用も少なくなるものと期待されていた薬物であります。セルトラリンは、いくつかのSSRIのなかでも最もセロトニンの取り込み阻害作用が強い薬物の一つであります。
 この薬物は、血中半減期は約26時間となっております。また、主要な代謝物でありますN-デスメチル体は臨床効果にはほとんど寄与しないと考えられています。また、この薬物は肝臓で代謝されますので、肝障害患者ではクリアランスが多少遅れるということが知られています。
 さて、この薬物のうつ病に対する臨床効果ですが、日本におきましては中等度改善以上が55.7%となっております。最近の抗うつ薬の成績と比較いたしますと、SSRIの一つでありますパロキセチンは50.4%、またフルボキサミンは61.7%、SNRIでありますミルナシプランでは56.4%でありましたので、ほぼそれらの薬物と同等の効果というふうに言えます。また、患者さんの重症度による改善率は大きな違いはないということがわかっております。

icon セルトラリンのうつ病に対する臨床試験成績

 うつ病では様々な症状を呈しますが、このセルトラリンはうつ病の各症状に対しまして全般的な改善を示しました。それでは、このセルトラリンの日本における主要な試験をご紹介したいと思います。

(「ランダム化治療中止試験(うつ病)試験デザイン」)

 この試験では、ハミルトンのうつ病評価尺度が13点以下、かつ軽度改善以上の患者さんを対象としまして、その後の再燃の率を調べたものです。はじめの8週間はセルトラリンで治療した後、その基準を満たした患者さんに対しましてセルトラリン群とプラセボ群の2群に割り付けて、その後16週間のあいだの再燃を見たものです。再燃の定義は、ハミルトンのスコアが18点以上、かつ投与前と比較しまして不偏以下であった患者であります。用量は50〜100mgを使用致しました。

 その結果でありますが、再燃率はプラセボ群では19.5%であったのに対し、セルトラリン群では8.5%で有意な差をもってセルトラリン群のほうが再燃が低かったわけであります。

(「ランダム化治療中止試験(うつ病)再燃・時間曲線」)

 この経過を示しました時間曲線であります。セルトラリン群のほうは非再燃率が高く、すなわち再燃率が低く、プラセボ群に対しまして再燃が低かったということが示されました。
 同様の試験は外国でも行われまして、緩解に達した患者さんをセルトラリン群とプラセボ群の2群に割り付けて18ヶ月間の経過を見た試験があります。その試験でもセルトラリン群の再発率は16.9%、プラセボ群は33%で、やはり有意差をもってセルトラリン群の再発率のほうが低かったということが示されまして、この日本における試験と同様の結果が得られております。
 この試験では二重盲検に割り付けられた後のセルトラリン群の改善は84.6%であったのに対し、プラセボ群では67.8%でありました。はじめの非盲検期で有意に症状が改善した後、プラセボ群ではその後の改善がほとんどございませんが、セルトラリン群では、その後も徐々に低下して、この差が有意差となって現れたものであります。

(「ランダム化治療中止試験(うつ病)QOLに及ぼす影響」)

 うつ病の患者さんではQOLが著しく低下するため、単に症状の改善だけではなく、このようにQOLを見ていくということも大事な臨床効果を見るために必要な項目であります。このQOLの尺度はQ-LES-Qというもので、時期式のQOL評価であります。この図をご覧になってもわかりますように、二重盲検期に入った後もQOLの上昇が見られ、プラセボ群に対してすぐれた効果を示したわけであります。この試験では、副作用による投与中断はセルトラリン群、プラセボ群とも同等で、副作用全体として副作用の発現率に大きな差はありませんでした。3%以上見られた副作用は、傾眠3.4%、および頭痛が3.4%でありました。
 この他、セルトラリン群は高齢者における試験も行われておりますが、やはり効果が認められております。また、長期投与試験でも効果が持続することが認められておりまして、ハミルトンのうつ病評価尺度の得点の推移を見ても、16週目くらいまではゆっくり改善が続いており、それ以後も効果が維持されるということが示されておりますので、うつ病の治療では長期の服用が必要になってくる場合が多いですが、効果が持続するということが認められています。

 
提供 : 株式会社スズケン

      

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