<スズケンDIアワー> 平成18年5月18日放送内容より |
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東京女子医科大学精神医学
本日は、間もなく承認されて発売されることになりました新しい抗うつ薬セルトラリンについて、主に日本の臨床試験の成績を中心に説明したいと思います。 セルトラリンは選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRIの一つでありまして、この図に示されておりますように、シナプスにおけますセロトニンの再取り込みを阻害することによって抗うつ効果を発揮するというふうに考えられています。選択性が高いため、他の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンに対する取り込み阻害作用はほとんどありません。また受容体に対する結合親和性も弱いため、副作用も少なくなるものと期待されていた薬物であります。セルトラリンは、いくつかのSSRIのなかでも最もセロトニンの取り込み阻害作用が強い薬物の一つであります。
うつ病では様々な症状を呈しますが、このセルトラリンはうつ病の各症状に対しまして全般的な改善を示しました。それでは、このセルトラリンの日本における主要な試験をご紹介したいと思います。 この試験では、ハミルトンのうつ病評価尺度が13点以下、かつ軽度改善以上の患者さんを対象としまして、その後の再燃の率を調べたものです。はじめの8週間はセルトラリンで治療した後、その基準を満たした患者さんに対しましてセルトラリン群とプラセボ群の2群に割り付けて、その後16週間のあいだの再燃を見たものです。再燃の定義は、ハミルトンのスコアが18点以上、かつ投与前と比較しまして不偏以下であった患者であります。用量は50〜100mgを使用致しました。 その結果でありますが、再燃率はプラセボ群では19.5%であったのに対し、セルトラリン群では8.5%で有意な差をもってセルトラリン群のほうが再燃が低かったわけであります。 この経過を示しました時間曲線であります。セルトラリン群のほうは非再燃率が高く、すなわち再燃率が低く、プラセボ群に対しまして再燃が低かったということが示されました。 うつ病の患者さんではQOLが著しく低下するため、単に症状の改善だけではなく、このようにQOLを見ていくということも大事な臨床効果を見るために必要な項目であります。このQOLの尺度はQ-LES-Qというもので、時期式のQOL評価であります。この図をご覧になってもわかりますように、二重盲検期に入った後もQOLの上昇が見られ、プラセボ群に対してすぐれた効果を示したわけであります。この試験では、副作用による投与中断はセルトラリン群、プラセボ群とも同等で、副作用全体として副作用の発現率に大きな差はありませんでした。3%以上見られた副作用は、傾眠3.4%、および頭痛が3.4%でありました。 |
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提供 : 株式会社スズケン | ||||
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