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<スズケンDIアワー> 平成18年6月8日放送内容より スズケン

第54回日本化学療法学会総会(耐性菌との戦い)


京都薬科大学
学長 西野 武志

icon メインテーマ:耐性菌との戦い

 第54回日本科学療法学会総会を、5月18日(木)と19日(金)の2日間、京都国際会館で開催させて頂きましたが、総会の内容は、招請講演1題、教育講演2題、会長講演1題、ミニ特別講演4題、シンポジウムが5つ、新薬シンポジウムが1つ、ワークショップ2つ、教育セミナーが10そして一般演題が142題の発表からなるもので、参加者は招待者や無料で参加できた学生を含めて約1,100名でした。その中の主なものをこれから紹介させて頂きます。

(資料:「会場看板」)

 今回はメインテーマを「耐性菌との戦い」とし、耐性菌のシンポジウムを3つ組まさせていただきました。1969年に米国のウィリアム・スチュアートは「感染症との戦いは終わった。人類は勝利を得た」と宣言し、今後は循環器分野などに力を注ぐべきだと示唆しました。しかし、現状はどうでしょうか。耐性菌が盛り返しています。いかなる新薬も、使用量が増えてくれば必ず耐性菌は出現してきます。過去の歴史を見ても、ペニシリン耐性ブドウ球菌に始まり、MRSA、PRSP、β-ラクタマーゼを産生しないアンピシリン耐性のインフルエンザ菌(BLNAR)、多剤耐性緑膿菌、多剤耐性結核菌、VRE、ESBLを産生する肺炎桿菌や大腸菌など実に様々な耐性菌が出現しています。抗菌薬が世に出てからずっと、耐性菌との戦いが続いている訳です。最近では、抗菌薬の開発を耐性菌が凌駕してしまうのではないか、とも言われています。

icon 細菌耐性化の歴史

 耐性菌への変化は、細菌にとっては極めて自然なことです。地球が誕生してからの歴史を考えると、人類の祖先は600万年前に出現したのに対して、細菌は38億年前に生まれたと言われています。地球が誕生してからの46億年を1年に換算しますと、人類は年末ギリギリの12月31日に誕生したことになりますが、細菌は3月の時点で既に出現しています。それ以降の凄まじい地球環境の変化を生き抜いてきた訳であります。細菌が出現した当初の地球には酸素がありませんでした。そこで最初は嫌気性菌が誕生し、その後、地球が酸素に覆われると、酸素の存在下でも生きられるように進化しました。170度の高温下でも生存し増殖する細菌が、深海の熱水鉱床から見つかっていますし、琥珀の中に封じ込められた状態で3千万年間生きていた細菌や、1億5千年前の南極の氷から分離された細菌、ダイオキシンを分解する細菌なども存在します。このような厳しい環境をかいくぐってきた彼等の歴史を考えると、抗菌薬という新たな環境に対する耐性化は、いとも簡単にやってのけるだろうと思います。細菌は至適条件下では、一晩のうちに72世代まで分裂します。突然異変によって、このうち1つでも新たな環境に対応するものが出現すれば、残りは全て死滅したとしても、生き残った1つが再び増殖を繰り返し、生き延びていく訳であります。
 そもそも、そんな生命体と人間が戦うというのが、間違っているのかも知れません。ですから、なんとか細菌と共存する方向性を探ることが、これからの化学療法のあり方とも言えます。京都の曼珠院の境内には、世界でも唯一の菌のお墓、菌塚があります。これを見るたびにそうした思いが強くなります。共存という意味も含めて今回は「耐性菌との戦い」をメインテーマに掲げた次第です。そして耐性菌に関連するシンポジウムを3つ組みました。

 

icon 耐性菌に対する新たな抗菌薬の開発

 シンポジウム1は「耐性菌に対する新たな抗菌薬の開発」がテーマで、耐性菌が出現すれば当然、新たな薬剤を開発していく必要性がありますので、6人の先生方が、それぞれ専門の抗菌薬の領域から説明されました。
 薬剤の作用機序は主に細胞壁、細胞膜、蛋白、核酸、葉酸合成阻害という5つに大別できます。新たな作用機序の薬剤を武器として持っておけば、作用機序の異なる薬剤をローテーションしながら使えます。現在、MRSAには既存のβ-ラクタム薬は全て無効です。PBP-2’という新たな細胞壁合成酵素が出現し耐性を示すからです。その酵素に対し親和性を示すβ-ラクタム薬が、カルバペネムとセフェムの両系統において開発されており、臨床試験段階にあります。また、ニューキノロンの耐性菌に有効な次世代のキノロン薬や、マクロライドの耐性菌に有効な次世代のマクロライド薬の開発も進んでおります。これら新薬の各論や新たな標的部位の可能性について各先生方が講演されました。

 
提供 : 株式会社スズケン

      

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