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<スズケンDIアワー> 平成18年6月15日放送内容より スズケン

DI実例集(153)〜安全管理におけるTDMの利用


山形大学医学部附属病院薬剤部 副薬剤部長
豊口 禎子

icon TDMとは

 本日は、安全管理におけるTDMの利用と題し、通常と少し異なった薬物血中濃度モニタリングの活用についてご紹介させていただきます。
 TDM(Therapeutic Drug Monitoring, 治療薬物モニタリング)とは、患者の薬物血中濃度を測定し、年齢、身長、体重、臨床検査値、薬歴等を基に、その患者に合った至適投与量や至適投与間隔を計算し、投与設計を行うということであります。TDMの対象となっている薬物は、ジゴキシン、テオフィリン、抗不整脈薬、抗てんかん薬等がございます。これらの薬物の血中濃度では、有効治療域、中毒域、非有効域が報告されております。通常は患者の薬物血中濃度が有効治療域の範囲内に入ることを目標に、投与設計を行っております。すなわち、薬物血中濃度が高い患者では、どのくらい投与量を減量したらよいかを計算し、また、薬物血中濃度が低く、治療効果が得られていない患者さんでは、どのくらい増量したらよいかを計算いたします。本日はこのような通常のTDMとは少し異なったTDMの利用につきまして、ご紹介させていただきます。

icon 救急医療における利用

 救急医療の中の一つに薬物中毒がございます。自殺目的等により故意に薬物を大量に服用されたり、小さいお子さんが薬物を誤飲されたりすることあります。このような薬物中毒の中に、市販のかぜ薬や解熱鎮痛剤を大量に服用される事例も多くみられます。市販の解熱鎮痛剤と申しましても、大量に服用いたしますと、重篤な症状を発現することがございます。
 多くの市販の解熱鎮痛剤には、アセトアミノフェンやアセチルサリチル酸が配合されております。例えば、バファリンA錠にはアセチルサリチル酸が、バファリンL錠にはアセトアミノフェンが含有されております。従って、患者がバファリンを服用されたとおっしゃられても、アセトアミノフェンを服用したのか、アセチルサリチル酸を服用したのかがわからない場合があります。そのような場合には、患者の尿や血液等から簡単に判別ができるキットが市販されており、これらを用いて薬物の同定を行うことが可能です。また、直接、薬物血中濃度を測定することによっても同定が可能であります。
 さらに、服薬した量が不明な場合や、嘔吐により正確な摂取量が不明な場合には、薬物血中濃度が目安となります。  

(資料1:「アセトアミノフェン血清中濃度と肝障害の危険性」)

 市販の解熱鎮痛剤の成分の1つであるアセトアミノフェンは比較的副作用が少ない薬物といわれ、繁用されております。しかし、大量に服用した場合、救急外来来院時にはさほど重篤に見えなくても、2〜4日後に重篤な肝障害等が発症することがございます。そこで、来院時に、アセトアミノフェンの血中濃度を測定し、数日後の肝障害の危険性を予測する試みがなされております。多くの症例から、アセトアミノフェン血中濃度と肝障害の関係を調査した報告があり、横軸に服用後の時間を、縦軸に血中アセトアミノフェン濃度をとり、実測の血中濃度をプロットして判定するノモグラムが報告されております。従って、血中アセトアミノフェン濃度を測定し、ノモグラムを用いて判定することによって、解毒剤であるn-アセチルシステインの投与を行う必要性があるかどうかを判断することができます。また、血中濃度が危険濃度より低い場合でも、アルコール中毒の方や肝機能障害をお持ちの方、臨床症状が出現されている方では、解毒薬を投与することもございます。
 また、解熱鎮痛剤の他の成分であるアセチルサリチル酸は、体内でサリチル酸になりますので、サリチル酸の血中濃度を測定いたします。アセトアミノフェンと同様にノモグラムや中毒濃度が報告されておりますので、これらの値をもとに危険性がある程度推定できます。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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