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<スズケンDIアワー> 平成18年6月15日放送内容より スズケン

DI実例集(153)〜安全管理におけるTDMの利用


山形大学医学部附属病院薬剤部 副薬剤部長
豊口 禎子

icon 抗菌薬の投与設計

 現在、抗菌薬ではPK/PDを基にした投与設計が行われております。

(資料2:「抗菌剤の体内動態と抗菌効果」)

 つまり、抗菌効果を最大にし、副作用をできるだけ少なくするように薬物血中濃度をもとに投与設計をするわけです。
 抗菌効果を上げるための投与設計の方法は抗菌剤の種類によって異なっております。アミノグリコシド系抗生物質やニューキノロン系抗菌剤は、濃度依存性作用を有し、最高血中濃度(ピーク値)および血中濃度時間曲線下面積(AUC)をできるだけ高くすることが治療効果を上げるといわれております。また、PAEを有するため、最低血中濃度がある程度低くても効果が得られることが報告され、1日1回投与も行われております。また、アミノグリコシド系抗生物質では、1日1回投与の方が、腎障害が少ないことも報告されております。一方、β-ラクタム系抗生物質やグリコペプチド系抗生物質は、時間依存性作用を有し、time above MIC が長い方が抗菌効果が高いといわれております。従って最低血中濃度が抗菌効果の目安となります。
 以上のように抗菌効果を上げるために最高血中濃度や最低血中濃度を上げるように投与設計しますが、一方では、副作用も懸念されます。アミノグリコシド系抗生物質やグリコペプチド系抗生物質は、腎機能障害や第8脳神経障害等の副作用を有しております。アミノグリコシド系抗生物質であるアルベカシンでは最低血中濃度が2μg/mL以上になると、腎障害の危険性が高くなるとが報告されております。従って、治療効果を上げ、なおかつ副作用が発現しないように、投与量と投与間隔を計算し、投与設計をしていく必要があります。
 これらのアミノグリコシド系抗生物質やグリコペプチド系抗生物質は大部分が腎から排泄されますので、腎機能が低下している患者や腎機能が変動している患者、高齢者や新生児、小児では、特に注意が必要となります。また、投与中にバンコマイシンクリアランスが低下していく例も見受けられますし、血清クレアチニン値に変動が見られずに、バンコマイシンクリアランスが低下している例もございます。従いまして、このような抗生物質では、定期的に血中薬物濃度をモニタリングし、投与計画を確認することが望まれます。

icon 遊離型薬物濃度のモニタリング

 薬物は血液中で、血漿蛋白と結合した型で存在するものと、結合せず遊離型で存在するものがあります。この遊離型薬物が組織に移行し、作用いたします。従って、遊離型の濃度が高くなれば、作用が強くなるわけです。薬物が結合する血漿蛋白には、アルブミンとα1-酸性糖蛋白等があります。アルブミンと結合する薬物には、フェニトイン、バルプロ酸等があり、アルブミン値が低下すれば、遊離型が増加する可能性があります。また、ジソピラミド、リドカインといった薬物はα1-酸性糖蛋白と結合し、この蛋白は炎症性疾患等により増加いたしますので、血漿蛋白結合率が変動しやすい薬物となります。通常、薬物血中濃度測定では、血漿蛋白に結合した型と遊離型の両方を合わせて測定しております。従いまして、通常測定される薬物総濃度が有効治療域内であっても、極端に栄養状態等が悪く、アルブミン値が低い患者では、遊離型濃度が高く、有害反応が発現する可能性がございます。このような場合には、遊離型濃度を測定する必要があります。もし、遊離型濃度が測定できない場合でも、遊離型の割合と血清アルブミン値が相関する薬物もありますので、アルブミン値をモニタリングすることが可能です。

 

提供 : 株式会社スズケン

    

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