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<スズケンDIアワー> 平成18年7月20日放送内容より スズケン

深在性真菌症治療薬アムホテリシンBリポソーム製剤


帝京大学医真菌研究センター
客員教授 山口 英世

icon 深在性真菌症治療の現状

 本日のテーマは、新しい深在性真菌症治療薬として今年(2006年)6月に発売されたばかりの「アムホテリシンBリポソーム製剤」であります。この製剤が導入されたことの臨床的意義をご理解頂くために、本題に入る前にわが国における深在性真菌症とその治療に使われる抗真菌薬の現状について少しご説明したいと思います。

(資料1:「わが国の剖検例に深在性真菌症検出頻度の年次推移」)

 深在性真菌症は、体の深部組織・臓器に起こる真菌感染症の総称です。国内でみられる深在性真菌症の大半は、カンジダ・アルビカンスのほか幾つかのカンジダ属菌種を原因菌とするカンジダ症、それにアスペルギルス・フミガツスを主とするアスペルギルス属菌種がひき起こすアスペルギルス症によって占められます。最近目立っているのは重篤なアスペルギルス症の増加であり、これが診断、治療上とりわけ大きな問題となってきております。そのほかにはクリプトコックス症、接合菌症、トリコスポロン症などがみられ、いずれも発生頻度は低いのですが、近年徐々に上昇する傾向にあります。いずれの原因菌も、カンジダのようにヒトの消化管に常在するか、さもなければ環境中に広く生息しているので、私達は常時曝露されていることになります。しかし幸いなことにどの菌も病原性はそれほど強くないので、感染・発症する例のほとんどはリスクの高い患者に限られます。好中球減少や細胞性免疫の低下をもたらすような様々な基礎疾患または医療介入は、いずれも大きな危険因子として働き、発症リスクを高めます。そればかりではなく、こうしたハイリスク患者では、一旦発症すると速やかに感染が進行して重篤化するため、適切な治療を開始しない限り、致死的転帰を辿る例が少なくないのです。ここで適切な治療といいますのは、有効性が期待できる抗真菌薬を、定められた用法・用量に従ってできるだけ早期から投与することにほかなりません。

(資料2:「わが国において深在性真菌症適応承認の抗真菌薬」)

 これまでわが国で何らかの深在性真菌症に対する適応が認められてきた抗真菌薬は、8薬剤ありました。そのうち5薬剤はアゾール系で占められ、残りはポリエン系、フロロピリミジン系それにキャンディン系が1薬剤ずつです。これらの既存薬は、一定の臨床的有用性をもっているものの、それらの有効性または安全性に限界があることから、それを補うかまたは凌駕する新しい抗真菌薬の臨床導入が強く求められていました。「アムホテリシンBリポソーム製剤」の開発・実用化は、こうした背景のもとになされたわけであります。

提供 : 株式会社スズケン

      

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