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<スズケンDIアワー> 平成18年9月28日放送内容より スズケン

同種造血幹細胞治療の前治療薬〜ブスルファン点滴静注


国立がんセンター中央病院
薬物療法部長 高上 洋一

icon造血幹細胞移植治療の動向

 本日は、このほど、同種造血幹細胞移植の際に行う前処置療法薬として承認された、ブスルファンの静注用製剤であるブスルフェクスについてご紹介させて頂きます。ブスルファンは、現在も経口剤がマブリン散の名前で慢性骨髄性白血病の治療薬として市販されていますが、通常の投与量は1日せいぜい4mg〜6mgであるのに対して、移植前治療として用いる場合には1回投与量が患者体重1 kgあたり1mgを、それぞれ1日4回服用します。例えば体重60kgの患者では1回量が60 mgとなり、散剤としては6gもの大量の粉末を飲む必要があります。また、消化管からの吸収も安定しないなどの問題もあるため、静注剤の開発が切望されていました。
  ちなみに「造血幹細胞移植」という言葉ですが、以前は単に骨髄移植と呼ばれていました。しかし現在は、末梢血幹細胞移植や臍帯血移植の普及によって、呼び名がこのように変わっています。造血幹細胞移植には、大きく分けて、自分の幹細胞を用いる自家移植と、ヒトの白血球の型であるHLAが一致した健常ドナーの幹細胞を用いる同種移植の2種類があります。前処置と呼ばれる大量療法を行ってまず骨髄を空っぽにした後に、血液中の白血球、赤血球や血小板の全てを作り出す源の細胞である造血幹細胞を点滴静注すると、やがて2週間〜3週間ほどでドナーの造血幹細胞が骨髄中に生着し、白血球数が正常範囲にまで回復します。ブスルフェクスは、特に同種造血幹細胞移植の前処置療法に承認を得ています。

icon移植前処置の意義

 ところで、この移植前処置には二つの目的があります。ひとつは、究極の抗癌剤療法として、患者体内のがん細胞を一掃することであり、もうひとつは、せっかく輸注されたドナーの細胞が、患者の免疫力で攻撃され、その結果として移植片が拒絶されることがないように患者自身の免疫を強く抑制することです。前治療には、大きく分けて、全身放射線を用いる方法と、複数の抗がん剤だけを組み合わせる方法があります。特に同種造血幹細胞移植時の前処置として代表的なものは、既に前処置の保険適応も取っているシクロホスファミド、すなわちエンドキサンと全身放射線照射の組み合わせ、および全身放射線照射を用いないエンドキサンとブスルファンの組み合わせです。
 もともと移植治療が開発された当初は、有用な抗がん剤もほとんど無かったために、全身放射線照射に大きく頼らざるをえませんでした。ただ全身放射線照射には間質性肺炎などの重篤な副作用が伴うことや、二次発がんが増加すること、あるいは小児患者では発育遅延をきたすことなどが問題となります。また現実的には、我が国では全身放射線照射を行える施設の数が少ないこともあり、抗がん剤を用いた前治療の開発に力が注がれてきました。今では、主にエンドキサン、メルファランやブスルファンなどが組み合わせて用いられています。我が国では、年間約2000例の同種造血幹細胞移植が行われていますが、その約20%にブスルファンを用いた前処置が行われており、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病や骨髄異形性症候群などでは、半分ほどの移植にブスルファンを用いた前治療が行われています。特に慢性骨髄性白血病などでは、全身放射線照射を含む前処置と遜色のない治療成績が得られています。

提供 : 株式会社スズケン

      

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