国立がんセンター中央病院
薬物療法部長 高上 洋一
ブスルファン経口製剤の問題点
さて、これほどに多く使用されているブスルファンですが、これまでは実に20年以上もの間、経口製剤が使われていました。これに関しては、前処置としては未承認であること以外にも、以下のような大きな問題点がありました。
- 経口投与した後の胃や腸からの吸収パターンが一定しないために、血漿中のブスルファン濃度が投与毎、あるいは患者毎に大きく異なること。
- 前処置の副作用として、ほとんどの患者に吐き気が発生するため、大量の粉末を内服するのはなかなか困難です。加えて、嘔吐した場合には、内服した薬剤も吐き出され、一部は既に吸収されているために、再投与に必要な用量を正確に把握することができません。従来は、内服後の時間経過や吐いた物の中に含まれた薬剤量から吸収量を推測して追加投与するという、実に大雑把な方法がとられていました。このため、当然、投与量が過剰あるいは過少となる場合が出てきます。実際に、過剰となった場合には静脈閉塞性肝疾患、(いわゆるVOD)が合併症として高率に発生し、高度の黄疸や腹水、肝機能障害を伴います。また過少となった場合には、白血病細胞が生き残って移植後の再発が増加する可能性が指摘されています。
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