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<スズケンDIアワー> 平成18年10月5日放送内容より スズケン

口腔咽頭・食道カンジダ症治療薬イトラコナゾール内用液


東京医科大学口腔外科
講師 里見貴史

icon口腔咽頭・食道カンジダ症とは

 口腔咽頭・食道カンジダ症は、口腔内や消化管、皮膚に常在菌として存在するカンジダ菌により発症する感染症です。主な病原菌は、Candida albicansであり、口腔内の常在菌で、病原性も高くありません。しかし、抗生物質の長期投与による菌交代症や、宿主の抵抗力の低下、ステロイド剤の投与などで、日和見感染症を起し、局所のカンジダ菌が増加して発症します。口腔咽頭カンジダ症の原因には、全身的要因と局所的要因とがあります。全身的要因には、ステロイド剤及び免疫抑制剤の長期投与やAIDSによる免疫機能低下などがあります。一方、局所的要因には、口腔癌などに対する放射線照射、シェーグレン症候群、加齢に伴う唾液腺機能の低下や義歯の不適合などが考えられます。
 臨床症状としては、口腔及び咽頭に白苔や発赤を認め、病変が広範囲に及ぶ場合では、舌の疼痛や灼熱感、味覚異常、嚥下困難等の自覚症状が認められ、多彩な臨床症状を呈します。確定診断は、病変部位から採取した検体の直接鏡検及び培養検査にて行われます。一方、食道カンジダ症の臨床症状は、咽頭痛、嚥下痛が最も多く、胸骨後部の疼痛や背部痛、嘔気、嘔吐なども見られますが、いずれも非特異的な症状であり、無症状のことも少なくありません。
 食道の中央から下部に好発し、内視鏡的に食道粘膜に特有な白苔や発赤、びらんなどの所見が認められます。また、しばしば口腔咽頭カンジダ症が食道まで及んでいることもありますが、多くが食道下部に発生するため、胃からの逆行性感染とも考えられています。臨床診断はX線及び内視鏡などが用いられ、確定診断には病変部位から採取した検体の真菌学的検査または食道粘膜生検が行われます。また、口腔内に増殖したカンジダ菌による誤嚥性肺炎として肺カンジダ症を発症した場合は、患者のQOLが著しく低下します。さらに全身の抵抗力が著しく減弱している場合では、口腔、咽頭、食道などにおけるカンジダ病巣から菌が血流あるいはリンパを介して全身に播種され、全身諸臓器に病変を形成することもあります。そのため、特に基礎疾患等により全身的な免疫機能の低下が認められる患者さんにおいては、カンジダ症の確実な治療が求められます。

icon口腔咽頭・食道カンジダ症の治療の現状

 日和見感染症である口腔咽頭カンジダ症及び食道カンジダ症は、その発症要因として、全身的もしくは局所的な免疫力が低下した状態を引き起こす疾患を有することが多いため、まず基礎疾患の治療を行い、その誘因を除去し、全身状態の改善を図るとともに、抗真菌剤の投与を考慮します。
 抗真菌剤の使用基準ですが、口腔内の粘膜上皮に病変が限局する口腔咽頭カンジダ症に対しては、薬剤の貯留性を高めた局所作用のゲル剤やシロップ剤でかなり効果に期待がもてます。ところが、免疫力が低下した症例や再発を繰り返した難治性病変では粘膜下層にまで菌糸が侵入する慢性肥厚性症例の場合が多く、局所作用のみの薬剤では効果が不十分で、明らかに内服薬の方が効果に期待がもてます。
 現在、本邦において抗真菌剤でよく使用されるものとして、アムホテリシンBシロップがありますが、消化器におけるカンジダの異常増殖が適応であり、フルコナゾールも消化管カンジダ症であります。いずれも口腔咽頭カンジダ症の適応はなく、保険診療で使用することはできません。口腔咽頭カンジダ症や食道カンジダ症(消化器又は消化管真菌症)のいずれにも適応を有する薬剤は、全身作用を有するイトラコナゾールカプセル剤と局所作用を有するミコナゾールゲルのわずか2剤のみです。また、口腔咽頭カンジダ症及び食道カンジダ症による嚥下困難や、加齢による嚥下能力の低下、固形製剤の服用が困難な患者さんにおいて服薬が容易な全身作用を有する抗真菌剤はないのが現状です。

提供 : 株式会社スズケン

      

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