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<スズケンDIアワー> 平成18年10月12日放送内容より スズケン

悪性神経膠腫治療薬テモゾロミド


埼玉医科大学脳神経外科
教授 松谷雅生

icon既存治療とテモゾロミドの比較

 それでは、テモゾロミドの有効性について現在までの治療法と比較して説明いたします。
 悪性神経膠腫に対して放射線治療に抗腫瘍薬を併用する、最初の第3相臨床試験の結果が1978年に発表されました。これは手術のみの群、手術後BCNUという抗腫瘍薬のみで治療した群、放射線治療60グレイのみの群、放射線治療60グレイにBCNUを併用した4群です。生存期間中央値、これはほぼ平均生存期間と考えて良いのですが、順に17週、25週、37.7週、40.5週となっております。BCNUを併用した群は最も長い生存期間40.5週を示しましたが、放射線治療単独群の37.7週との差は、統計学的には有意ではない、すなわち誤差の範囲であるとの解釈でした。しかし、BCNU併用群の成績が最も良かったことにより、この論文発表以降、悪性神経膠腫には放射線治療薬に60グレイにBCNUを併用する治療法が標準となり、その後に開発された抗腫瘍薬の有効性は、このBCNUとの比較になりました。

悪性神経膠腫治療の歴史2

 1983年に発表されたChangの論文では、放射線治療単独60グレイ、同じく放射線治療単独70グレイ、放射線治療60グレイにBCNUを併用した群、および新しく開発されたメチルCCNUという薬にDTICという薬剤を加えた4群の効果を検討しております。その結果、放射線治療+BCNUがやはり最も良い成績を挙げましたが、4群の間では有意な差がない、言い換えれば、放射線治療単独60グレイという最も基本的な治療に勝るものはないとの結論になりました。この論文のもうひとつ重要なところは、BCNUを放射線治療終了後も各々、継続的に投与、すなわち放射線治療後の残存腫瘍細胞に継続的に攻撃を加える、維持化学療法として投与したことです。しかし、結果が示すところは、維持化学療法の意義はなかったことになりました。その後もたくさんの薬剤がBCNUに戦いを臨みましたが、いずれも敗退しており、放射線+BCNUに数字の上で上回る治療方法は現在まで生まれておりません。
 結局、現在まで行われてきた全ての臨床試験において、放射線+BCNUは、放射線治療単独より、わずかに上回る生存率を示したことにより、この治療法は悪性神経膠腫に対する標準治療として長く君臨してきました。しかし、正確には、放射線治療+BCNUの効果は、放射線治療単独群と比較して統計学的には有意ではない、すなわち、BCNUの併用効果はないという解釈になります。これまでの治療の歴史から引き出されたもうひとつの結論は、放射線治療後にBCNUなどの化学療法を継続する意義が認められなかったことです。

信頼できる12無作為比較臨床試験結果の分析

 そこで、2002年に臨床試験の結果を検証するグループが、それまで発表された悪性神経膠腫に対する12編の信頼できる治療論文を分析いたしました。その結果、放射線治療に化学療法の併用、そのほとんどはBCNUですが、その併用群の2年生存率20%は放射線治療の単独群の15%と比較して、わずかではあるが優位な結果であるということを示しました。

提供 : 株式会社スズケン

    

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