→ 番組表はこちら
→ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成18年10月12日放送内容より スズケン

悪性神経膠腫治療薬テモゾロミド


埼玉医科大学脳神経外科
教授 松谷雅生

iconテモゾロミドの効果

 テモゾロミドの効果に戻ります。全ての新薬の開発と同じように、効果と安全性を確認した後に、ヨーロッパの脳腫瘍治療グループは、膠芽腫glioblastomaに対して、放射線単独治療群と放射線治療にテモゾロミドを併用する治療との第V相比較試験を行いました。併用群は、放射線治療開始と同時にテモゾロミドを42日間連日投与し、放射線治療終了後も1ヶ月に1回テモゾロミドを5日間投与、それを継続するものです。ここで、テモゾロミド併用治療の効果を判定する相手として、放射線治療+BCNUではなく放射線治療単独を選んでおります。この臨床試験を企画したヨーロッパの治療グループの解釈は、それまでの全ての第V相臨床試験において放射線治療単独群に優る治療は出現しなかったので、比較対照相手は放射線治療単独群でよいとの解釈です。

欧州における放射線+テモゾロミドVS.放射線治療単独 臨床試験

 その結果は期待したように、テモゾロミド併用群は放射線治療単独群と比較して、統計学的に有意に優れた延命効果を示しました。テモゾロミド併用群の生存期間中央値は14.6ヶ月で放射線治療単独群12.1ヶ月より2.5ヶ月の延長、2年生存率は26.5%で、放射線治療単独群の10.4%と比べると16.1%の上積み効果です。膠芽腫に対して放射線治療単独群に優る効果を示した初めての抗腫瘍薬として、テモゾロミドが認められたことになります。

Nitrosourea剤とテモゾロミドの抵抗性要因

 テモゾロミドの効果は、腫瘍組織内のMGMTという酵素の存在によって左右されます。このMGMT発現は、ニトロソウレア系抗腫瘍薬であるBCNUや、わが国のACNUにとっても同じく治療抵抗性要因として指摘されております。テモゾロミドの効果を示したヨーロッパの治療グループは、臨床試験に登録された症例において腫瘍組織内のMGMTを阻害する現象、すなわちMGMT発現促進因子のメチル化現象の有無を検討し、45%の症例で阻害因子を認めております。この群では、生存期間中央値が21.7ヶ月まで延長しております。この治療成績は、膠芽腫の治療目的の第一歩である2年生存率50%に近いもので、この薬剤に対する治療医の期待を裏切らないものです。逆に阻害現象のない場合は、12.7ヶ月と不良で、ほとんど放射線治療単独群と同じ成績で、テモゾロミドの効果がないに等しい結果です。今後、テモゾロミドを投与する症例には、MGMT発現阻害因子の有無を事前に確認しておくことにより、その効果をより確実に期待することができます。

iconテモゾロミドの今後の発展性

 テモゾロミドは今後、膠芽腫、退形成性星細胞腫のみならず、WHO分類のグレードVとWに該当する悪性神経膠腫の治療において、放射線治療との併用および維持化学療法としての投与の第一選択薬として用いられることになるでしょう。また、今まで他の薬剤で治療して再発した症例でも、生存期間を延長する効果が期待できます。今後、この薬剤の効果をさらに高めるために、放射線治療中の投与方法の検討や、他の抗腫瘍薬との併用を検討する試みがすでに欧米で始まっており、わが国でも他の薬剤との併用を検討していかなければなりません。

提供 : 株式会社スズケン

      

前項へ 1 2 3