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<スズケンDIアワー> 平成18年11月09日放送内容より スズケン

非アルカロイド系麻薬鎮痛薬レミフェンタニル


大阪大学大学院麻酔・集中治療医学
講師 萩平 哲

 オピオイド鎮痛薬であるレミフェンタニルが2007年早々に我が国でも臨床使用できるようになります。レミフェンタニルは1996年5月、ドイツにおいて最初の承認が得られて以来、米国、英国をはじめとする欧米諸国等で麻酔科医に広く使用されています。ここでは現代の麻酔におけるレミフェンタニルの役割について解説します。

icon麻酔管理の現状とバランス麻酔

 麻酔管理は循環や呼吸を含めた全身状態の管理を意味しますが、ここでは麻酔に関連する薬剤の使用という狭い意味で麻酔という言葉を用いることにします。全身麻酔では、鎮静、鎮痛、筋弛緩の3要素を適切に管理することが重要です。かつては麻酔薬と筋弛緩薬だけで行う麻酔が一般的でした。しかし現在使用されている薬剤単独ではこれらの要素を適切に管理することは困難であることが示され、麻酔薬、鎮痛薬、筋弛緩薬を組み合わせて用いるバランス麻酔が一般化しています。
 現在使用されている吸入麻酔薬はイソフルランやセボフルランです。Zbindenらは、維持していたイソフルランの呼気濃度と執刀前後での収縮期血圧の変化について調べました。執刀前の血圧はイソフルランの濃度に依存して低下するものの、執刀前後の血圧変化はイソフルランの濃度に依存していないことが示され、このことからイソフルランでは濃度を高くしても侵害入力を抑制できないことが示されました。また、Segawaらはイソフルラン麻酔またはセボフルラン麻酔下の生体肝移植のドナーにおいて、執刀前後の血中カテコラミン濃度の変化について調べています。いずれの麻酔薬においても執刀後の血中カテコラミン濃度は麻酔薬濃度が高くても減少せず、これらの麻酔薬が侵害入力を抑制していないことが示されました。これらの事実から現在の麻酔薬では鎮痛薬を併用する必要があることがわかってきました。そして全身麻酔の各要素を別個の薬剤で管理するバランス麻酔が一般的となってきたのです。

icon全身麻酔と鎮痛

 全身麻酔の3要素のうちで最も重要なものは鎮痛です。「痛み」は意識上に認知される感覚ですから全身麻酔下のような無意識の状態では「痛み」は存在しません。従って「鎮痛」は不要だと考えられるかもしれません。ここで言う「鎮痛」とはもう少し広い意味で「抗侵害受容」を意味するものです。意識がない状態でも手術刺激などの侵害刺激によって逃避反射による体動が生じたり、高血圧や頻脈といった循環系の反応が生じます。さらには視床下部-下垂体系を介してストレスホルモンが分泌され全身的なストレス反応も生じます。これらの反応を抑制するためには鎮痛薬を使用して侵害入力が上位中枢に伝達されることを抑制することが重要となります。
 オピオイド鎮痛薬は、鎮痛薬の中で最も強力な鎮痛作用を持ち、手術侵襲を適切に抑制するために適した薬剤です。現在最もよくバランス麻酔に用いられているオピオイド鎮痛薬は、フェンタニルです。フェンタニルは強力な鎮痛作用を有するものの、筋組織や脂肪組織に蓄積する傾向があるため、長時間手術での投与や高用量投与を行うと、手術後に呼吸抑制を引き起こす可能性があり、慣れなければ適切に使用することが難しい薬剤でした。一方レミフェンタニルは、超短時間作用性であるため用量調節性に優れています。

提供 : 株式会社スズケン

      

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