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<スズケンDIアワー> 平成18年11月23日放送内容より スズケン

第21回国際高血圧学会より 降圧薬の話題


大阪大学大学院老年・腎臓内科学
病院教授 楽木宏実

iconJATOSの発表から

 降圧薬との関係では、最も多くの聴衆を集めた大規模臨床試験の成績をいくつか紹介します。
 石井當男先生により発表されたJATOSは、65〜85歳の高齢者高血圧の治療目標について、Ca拮抗薬のエホニジピンを基礎薬として、心血管イベント発症への影響の点から検討したものです。4418例の登録がなされ、2年間の経過観察が行われました。降圧目標は、強化管理群が収縮期血圧を140mmHg未満、通常管理群は140mmHg以上160mmHg未満としました。最終的に強化管理群で136/75mmHg、通常管理群で146/78mmHgとなり、両群とも目標内で十分な降圧が達成されました。2年間の経過中の血圧値は、強化管理群の方が収縮期血圧で6,8mmHg、拡張期血圧は2,3mmHg低値でした。通常、大規模臨床試験においては1mmHgの血圧差は、数%の脳卒中発症の差につながると考えられていますが、これだけの血圧差があったにもかかわらず、JATOSでは両群間の脳卒中、心血管疾患、腎不全の発症率に全く差を認めませんでした。この理由について、発表者の石井先生は、治療介入初期の数ヶ月での降圧の差が小さかったために、強化管理群と通常治療群の違いにつながらなかったのではないかと述べられましたが、観察期間が2年間と短かったことも影響した可能性があります。また、一方で高齢者高血圧においては、145/78mmHg程度まで降圧できれば、予後改善効果が十分得られるという可能性も残ります。石井先生はこの点に関して、強化管理群と通常治療群で忍容性や全死亡に差がなく、全ての対象者について140mmHg未満に降圧された群とそれ以外の群とを比較した結果においても、140mmHg未満に降圧した群の方で予後が良かったという解析結果が得られており、高齢者において積極的降圧をむしろ推奨する結果であったと結ばれました。

 

iconCASE-Jの報告から

 大阪大学の荻原俊男教授が主要結果の発表を行ったCASE-Jは、ARBのカンデサルタンとCa拮抗薬のアムロジピンの2群に無作為に割り付けられたハイリスク高血圧患者4728例について、平均3,2年の予後追跡調査を行った試験です。試験デザインは非盲検無作為群間比較法が採用され、登録・追跡から解析までを京都大学EBM研究センターが担当しました。CASE-Jでは高齢者が約半数を占め、糖尿病合併例が約43%と他の大規模臨床試験よりも多く、また、平均BMIが24,5%前後ということから、日本人の高血圧の現状を強く反映していると考えられます。試験開始時の血圧はカンデサルタン群162/92mmHg、アムロジピン群163/92mmHgでしたが、達成血圧値は各々136/77mmHg,134/77mmHgとアムロジピン群で若干低くなりました。主要評価項目である心血管系イベントは両群ともに134例すなわち5,7%ずつで、心血管系イベントを構成する突然死・脳血管イベント・心イベント・腎イベント・血管イベントいずれも両群間で有意差はありませんでした。ガイドラインに適応した十分な降圧が両群で得られ、その結果として両群での主要エンドポイントの発生に全く差がなかったことは、厳格な降圧の重要性を再認識させる結果と考えます。さらに、2次エンドポイントのなかで、カンデサルタン群ではアムロジピン群よりも心エコーの左室心筋重量係数で評価した左室肥大の退縮が有意に大きく、新規糖尿病発症も36%有意に減少しました。興味深いことに、BMI高値例においては、カンデサルタン群の糖尿病新規発症抑制効果はさらに顕著で、全死亡もカンデサルタン群で有意に抑制されました。近年日本においても、肥満やメタボリックシンドロームの増加が指摘されており、今後の診療において有用な知見が得られたといえます。

 
提供 : 株式会社スズケン

    

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