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<スズケンDIアワー> 平成18年11月30日放送内容より スズケン

消化性潰瘍剤―ランソプラゾール


大阪府済生会中津病院消化器内科
部長 蘆田 潔

 プロトンポンプインヒビター・ランソプラゾール(商品名タケプロン)の注射剤の製造販売が承認されました。ランソプラゾールは、これまで胃潰瘍・十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症などの酸関連疾患や、ヘリコバクター・ピロリ除菌療法に全世界で広く使用されている薬剤です。わが国では、経口剤のみが使用可能でしたが、この度の承認により、経口投与不可能な上部消化管出血患者さんにランソプラゾール注射剤の投与が近々に可能になります。本日は注射剤の有用性と臨床薬理的特徴について、開発時のデータを基に解説いたします。

icon出血性胃潰瘍の診療チャート

出血性胃潰瘍の診療フローチャート

 わが国の上部消化管出血の疾患別頻度は、胃潰瘍がもっとも多く約35%、次いで十二指腸潰瘍と急性胃粘膜病変がそれぞれ10〜20%となっており、潰瘍病変が大多数を占めています。出血に対しては、まず内視鏡検査で出血部位とその状況を把握したうえで、必要に応じて内視鏡的止血術が行われます。内視鏡的止血術の進歩により、止血成功率は90%を超えています。胃潰瘍治療ガイドラインでは、止血術後に絶食、補液に加え、プロトンポンプインヒビターやH2受容体拮抗剤の経静脈的投与が推奨されています。酸分泌抑制剤が、なぜガイドラインで推奨されるのでしょうか。それは胃内pHが止血効果に影響を与えることによります。胃内pHは、食物の中和作用によって一過性の上昇がみられますが、それ以外の時間帯はpH1〜2を推移します。蛋白分解酵素であるペプシンは、pH1〜2が至適pHであり、もっとも活性が高くなります。内視鏡止血後に血餅や血栓が形成されても、ペプシン活性が高いと分解され、再出血の危険性が高まります。ペプシンの活性は、pH4以上になると失活します。ペプシン活性を阻害するためには、胃内pHを4以上に保つ必要があります。

上部消化管出血患者を対象としたタケプロン注射剤1回30mg.1日2回投与による胃内pHに推移

 一方、血液凝固機能は、pH7.4以上では正常ですが、pH5.4以下になると完全に抑制されます。凝固機能の面からは出血局所のpHを5.4以上に保つことが求められます。凝固能の保持とペプシン活性の双方の観点に立てば、pHは5.4以上に保つことが望まれます。実際に上部消化管出血患者さんにランソプラゾール30mgを1日2回、経静脈的に投与し、胃内pHを72時間連続測定した成績では、ランソプラゾール投与後4時間以降、胃内pHの中央値は6以上を保持していました。すなわち、ランソプラゾールは、再出血の危険因子を取り除くことにより、永久止血へ導く補助的役割を果たしています。

提供 : 株式会社スズケン

      

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