<スズケンDIアワー> 平成18年12月21日放送内容より |
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東京慈恵会医科大学小児科
ラロニダーゼは、ムコ多糖体の加水分解酵素のひとつであるα-L-イズロニダーゼを遺伝子組換え技術を用いて製造したムコ多糖症I型に対する酵素製剤です。ムコ多糖症I型は先天代謝異常症のひとつであり、その中のリソゾーム病に分類されています。そこで、ムコ多糖症I型ならびにラロニダーゼのお話をする前にまず、先天代謝異常症とリソゾーム病についてご説明しなければならないと思います。ご存じのように生体内では種々の生体反応がおきています。この反応は酵素反応により進行しますが、酵素の作用を受けて反応をおこす物質をその酵素の基質と呼びます。酵素は遺伝子情報により合成されます。そこで、遺伝子変異がおこり、酵素活性が低下すると、本来は代謝されるべき基質が、体内のいろいろな場所に蓄積するため多彩な臨床症状が出現します。これらの疾患群を先天代謝異常症と総称しています。多くの酵素は細胞質に存在しており、特に細胞内小器官であるリソゾームには多くの加水分解酵素が存在しています。このリソゾームに存在する酵素の活性が先天的遺伝子異常により低下したために引き起こされる疾患をリソゾーム病と呼んでいます。リソゾーム病はさらに蓄積する基質の種類により(1)リピドーシス、(2)ムコ多糖症、(3)ムコリピドーシスなどに分類されています。
ムコ多糖症についてご説明します。 ムコ多糖体は皮膚、骨、軟骨、靱帯のような結合組織を構成する物質のひとつでヘパラン硫酸やデルマタン硫酸、ケラタン硫酸等のグリコサミノグリカン(以後GAGと省略します)から構成されています。そしてGAGは複数の代謝酵素で分解されていますが、ムコ多糖症はそれらの酵素の活性が低下するため種々のムコ多糖体が組織内に蓄積することにより発症する疾患群で、その症状、欠損酵素により、I型、U型、V型、W型、Y型、Z型に分類されています。ムコ多糖症I型は、ムコ多糖体の代謝酵素であるα-L-イズロニダーゼ活性が低下するため、ヘパラン硫酸やデルマタン硫酸が組織に蓄積することにより発症します。 |
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提供 : 株式会社スズケン | ||||
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