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<スズケンDIアワー> 平成19年1月4日放送内容より スズケン

多発性骨髄腫治療薬ボルテゾミブ


国立病院機構名古屋医療センター
院長 堀田 知光

icon分子標的治療の登場

 ここ数年、抗がん剤やステロイドを使った従来の治療とは全く違う治療薬が登場し、多発性骨髄腫の難治・再発例に対して優れた治療効果が報告されています。それは分子標的治療と呼ばれる治療薬で,腫瘍細胞がもつ特徴的な抗原や機能分子を標的として攻撃するもので,正常細胞には傷害を与えない、いわば「魔法の弾丸」といえる薬です。

ボルテゾミブ

 なかでも、最近、わが国で承認されたボルテゾミブは、細胞増殖に関わるタンパク質の品質管理に関与するプロテアソームを可逆的かつ選択的に阻害することによって細胞内のシグナル伝達系に影響を与えて、細胞周期の停止、血管新生の抑制、アポトーシスの誘導などの作用により抗腫瘍効果を発揮します。

ボルテゾミブの抗腫瘍作用

 また、ボルテゾミブは、多発性骨髄腫においてNF-κBの活性化を抑制して骨髄腫細胞と骨髄ストローマ細胞の接着を阻害する作用ならびに骨髄腫細胞の増殖に必要なサイトカインであるIL-6などの産生・分泌を抑制することによって抗腫瘍効果を示すことが知られています。
 ボルテゾミブは1.3mg/m2を第1,4,8および11日に静脈注射し、3週を1サイクルとしてくり返します。国内で行われた臨床第I・U相試験では、登録された再発または治療抵抗性の多発性骨髄腫患者における奏効率(CR+PR)は30%でした。米国で行われた再発・難治例に対するボルテゾミブの第U相試験である「サミット」試験では、196人の再発もしくは治療抵抗性の多発性骨髄腫患者に投与して27%の奏効率を示し、stable diseaseと呼ばれる進行のない安定した状態を維持する効果までを含めると59%の患者がベネフィットを得ることができたと報告されました。そして「エイペックススタディ」と呼ばれる第V相試験では、669人の再発した多発性骨髄腫患者さんを対象に、ボルテゾミブ投与群とデキサメタゾン投与群に分けて検討したところ、奏効率はボルテゾミブ群が38%、デキサメタゾン群が18%で、ボルテゾミブ群の中には単クローン性の免疫グロブリンが免疫固定法で消失する完全寛解の状態が6%の患者に認められました。

APEX試験におけるデータ

 

 また、再発までの期間や生存期間についても、ボルテゾミブ使用群が優れており、従来の再発や治療抵抗性の骨髄腫治療の中心であるステロイド療法と比較して優れていることが示されました。その一方で、ボルテゾミブを使用した患者の75%にグレード3以上の有害事象が認められました。その内訳は、血小板減少症30%、好中球減少症14%、貧血10%といった造血器障害が主で、その他に末梢神経障害8%、下痢7%倦怠や息苦しさが6%と報告されています。
 日本で行われた再発または治療抵抗性の多発性骨髄腫を対象とした臨床第I・U試験でもほぼ同様の結果が得られました。しかし、海外ではほとんど報告のなかった本剤との因果関係が否定できない重篤な呼吸器合併症が34例中1例に認められました。

間質性肺炎発現例(国内治験症例)の胸部CT画像所見

 一方で治験とは別に個人輸入で使用された患者さんに重篤な呼吸障害が多発しているとの情報があり、日本臨床血液学会がアンケート調査をしました。

急性肺障害・間質性肺炎の注意喚起

 その結果、国内で個人輸入によってボルテゾミブを使用した47例のうち7例に呼吸器障害が発生したと報告されました。肺疾患の既往がある場合や造血幹細胞移植後の使用の際には注意が必要です。
 多発性骨髄腫の中でも、予後不良の印である第13番染色体の異常をもっていたり、骨髄以外の部位に腫瘤をもつ患者さんは、自家末梢血幹細胞移植やサリドマイド療法を行っても、予後が悪いとされています。しかし、ボルテゾミブは、このようないわゆる予後不良群にも単クローン性免疫グロブリンの低下や腫瘤の縮小などの良好な反応性を示すことがわかってきており、実際に生存期間の延長に寄与するかどうか検討が進められています。さらに、最近では未治療の患者さんの初回治療にも抗がん剤やステロイドとボルテゾミブを併用する臨床試験が進められています。今後は寛解導入率だけでなく、生存期間をどこまで延長できるかが重要課題と考えられます。

提供 : 株式会社スズケン

    

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