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<スズケンDIアワー> 平成19年5月17日放送内容より スズケン

COX-2阻害薬セレコキシブ


近畿大学奈良病院整形外科・リウマチ科 教授
宗圓 聰

 本年(2007年)3月に新規のCOX-2選択的阻害薬であるセレコキシブが薬価収載されました。本日は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)におけるCOX-2選択的阻害薬の位置付け、セレコキシブの臨床効果、有害事象を含め、その適応と適正使用についてお話します。

icon NSAIDsとは

NSAIDsの作用機序

 NSAIDsはステロイド以外で、抗炎症作用を持つ薬物群の総称です。シクロオキシゲナーゼ(COX)はアラキドン酸カスケードの最初に働く律速酵素であり、NSAIDsはCOX活性を阻害してその薬理作用を発揮します。アラキドン酸は特異的なホスホリパーゼにより細胞膜リン脂質から遊離し、COXにより酸化されプロスタグランディン(PG)G2が形成されます。さらに、PGG2は過酸化反応によりPGH2に変換され、 PGH2はその後各種合成酵素によりPGE2、PGI2、PGF2α、PGD2、トロンボキサンA2などに変換されます。これらの代謝物はそれぞれ異なる細胞膜受容体を介して異なる生理活性を示します。
 一方、COXには二つのアイソザイム、構成型のCOX-1と誘導型のCOX-2が存在します。COX-2は通常は細胞内にはほとんど存在せず、炎症部位でさまざまな炎症細胞に著明に発現誘導されます。COX-2はサイトカイン、増殖因子、ホルモン、発癌プロモーターなどの刺激により、線維芽細胞、血管内皮細胞、マクロファージ、滑膜細胞などにNF-κBやAP-1転写因子の活性化、種々のMAPキナーゼのリン酸化を介して急激に大量に発現誘導され、炎症に関与するPGE2やPGI2などが産生されます。一方、COX-1はほとんど全ての細胞に常に存在する構成型の酵素であり、胃粘膜保護、腎機能維持、血小板機能維持など生体保護に働くPGを合成します。
 従来のNSAIDsはCOX-1の阻害により消化管障害、腎障害、血小板機能抑制などの有害事象が出現すると考えられてきました。特に、消化管障害が最も頻度が高く、1998年の米国の報告ではNSAIDsによる消化管障害による死亡例が年間16,500人とされ、 HIV感染による死亡例とほぼ同数であることが示されました。わが国でも、1991年に日本リウマチ財団から、NSAIDsを3ヶ月以上服用している1,008例に内視鏡検査を行なったところ、全異常所見を合わせると62.2%に異常が認められたことが報告されています。

icon セレコキシブの作用機序

 このようなことから、1991年に発見されたCOX-2をターゲットとする薬剤の開発が開始され、1998年に初のコキシブ系薬剤であるセレコキシブが海外で承認されました。

従来のNSAID

 従来のNSAIDsは化学構造により分類されてきましたが、これらNSAIDsの中にもCOX-2選択性の高い薬剤、エトドラク、メロキシカム、ニメスリドなどがあります。それに対してコキシブ系と称される薬剤はCOX-2選択性を得るために新たに立体構造を設計した薬剤です。セレコキシブは極性のスルホンアミド基とメチルフェニル基を有し、通常のNSAIDsがCOX-1、COX-2のアルギニンの120位に結合するために有しているカルボキシル基を持たない薬剤です。スルホンアミド側鎖がCOX-2の523番目のバリンのあとに存在する親水性のサイドポケットへ結合し、フェニル基はCOX-2の疎水性の部分へ結合します。そのため、アラキドン酸がCOX-2の中に入れずPG合成ができないことが明らかにされています。アラキドン酸が活性部位に到達するスペースはCOX-1の方がCOX-2よりも狭いことも知られており、そのため、大きなスルホンアミド側鎖はCOX-1へは侵入できないのでCOX-1活性は抑えられません。
 このようなことから、セレコキシブには従来のNSAIDsでみられたCOX-1阻害による各種有害事象の軽減が望めることになります。現時点で消化管障害の軽減と血小板機能抑制がないことは確実といえます。一方、腎障害に関しては、従来のNSAIDsと有意差はなく、最近腎臓にはCOX-1もCOX-2も構成型として発現していることが明らかにされました。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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