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<スズケンDIアワー> 平成19年5月24日放送内容より スズケン

パーキンソン病薬 エンタカポン


和歌山県立医科大学神経内科 教授
近藤 智善

 本日は、新しい抗パーキンソン病薬であるカテコール-O-メチル転移酵素阻害剤(COMT阻害剤):エンタカポンについてお話したいと思います。

icon パーキンソン病とL-DOPA補充療法

 パーキンソン病は、中脳の黒質、緻密層といわれる神経核にあるドパミンを作る細胞が原因不明のまま次第に減少していくため、ドパミンの送り先である脳の線条体という神経核でドパミンの欠乏が起こり、無動や筋固縮、振戦、姿勢反射障害、便秘、などが発現する、慢性に進行する病気です。最も重要な治療薬としてL-DOPAという、ドパミンを補う薬剤があります。
 COMT阻害剤の作用の仕組みをごく簡単にいいますと、末梢血液中でのL-DOPAの代謝を抑制し、L-DOPAの血液中濃度の持続・延長をはかる薬剤ということになります。
 COMT阻害剤の効果を理解して頂くためには、まず、パーキンソン病のL-DOPA治療について理解して頂く必要がありますので、少しだけL-DOPA治療とその問題点について解説しておきます。

パーキンソン病の進行とL-DOPA補充の効果

 L-DOPA療法はパーキンソン病の脳で不足しているドパミンをその前段階の物質として投与し、ドパミンを補うという治療法です。1960年代後半から現在に至るまでパーキンソン病の治療において、最も有効性・安全性が高く、信頼性の高い薬剤です。
しかしながら、L-DOPAは、一端ドパミン神経に取り込まれ、酵素の働きでドパミンに変換され保存されてから作用しますので、その効果は患者の脳のなかの生き残っているドパミン神経の働きに依存します。
 パーキンソン病患者の黒質細胞の数は病気の経過とともに、次第に減少していきますのでL-DOPAを使ってドパミンの補充が行われていても、ドパミンを蓄える能力は段々低下してきます。
  薬の血液中の濃度がピークから半分まで下がるまでの時間をT-halfといい、薬の効果時間の目安になっていますが、L-DOPAの場合、T-halfは、約1時間で、非常に短いのが特徴です。一般には、一日3回というように分けて服薬されますから、先に述べましたように、脳に供給されるL-DOPA量には時間による変動があります。

Wearing off現象

 病気が進行したパーキンソン病では、ドパミン神経の減少が次第に進行して行きますので、L-DOPAを取り込む能力や、L-DOPAから変換されたドパミンを蓄えておく能力も、段々、小さくなってきます。そうするとドパミンの原料であるL-DOPAの血液からの供給が、直接、脳のドパミンの量に影響することになります。つまり、ドパミン欠乏の程度が末梢からのL-DOPA供給量に左右されることになります。
 このような、L-DOPAの血液中の濃度が高くなると症状が軽くなり、濃度が低くなってくると症状が悪くなる変動をwearing off現象といい、長期治療に伴う非常に頻度の高い合併症のひとつです。
 Wearing off現象はL-DOPAの血液中の濃度の変化に伴った症状ですから、それを改善するひとつの方法として、L-DOPAの血液中の濃度を安定化させることが考えられます。COMT阻害剤はL-DOPAの血液中の濃度半減期(T-half)を延長する薬剤ですので、このような目的にかなった薬剤ということができます。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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