→ 番組表はこちら
→ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成19年6月14日放送内容より スズケン

コレステロールトランスポーター阻害薬-エゼチミブ


帝京大学内科 主任教授
寺本 民生

icon 脂質異常症治療の現況

 動脈硬化発症における高コレステロール血症の意義が確立され、高コレステロール血症治療薬による大規模臨床試験の結果から脂質異常症治療の意義も認識されるになってきました。現状では脂質異常症市場の約90%がHMGCoA還元酵素阻害薬(スタチン)で占められています。これは、スタチンの安全性が高く、多くの動脈硬化予防試験で有効性が示されているというエビデンスに基づいた結果であります。しかし、私どもが行った約25000例を対象としたJ-LAP研究では、最もLDL-Cを低下させる必要のある冠動脈疾患既往者でも、その目標値である100mg/dLに到達しているのは30%未満、糖尿病などの高リスクといわれる群でも、その目標値である120mg/dLに到達しているのは約50%であり、必ずしも十分なコントロールが得られていないのが現状です。もちろんスタチンの増量という選択肢もありますが、副作用の問題に加えて増量による効果は約+6%と、必ずしも十分とはいえません。ここにスタチンとはまったく異なる薬効、すなわちコレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチミブが注目されている理由があります。この薬剤が特異的にコレステロール吸収抑制作用を有するというということは以前よりわかっていたのですが、その作用機序については、長い間不明でした。
 その作用機序を求める研究過程で、Niemann-Pick C1 like 1 Protein(NPC1L1)がコレステロール吸収に重要な役割を演ずる分子であることが2003年に発見され、同じ論文でエゼチミブがNPC1L1を抑制することによりコレステロール吸収を抑制するのではないかとして発表されたのです。

icon エゼチミブの作用機序

 ここでは、まずエゼチミブという薬剤について触れた後NPC1L1という分子とステロール吸収についても考えてみたいと思います。
エゼチミブはコレステロールトランスポーター阻害薬であり、作用点である小腸粘膜細胞でグルクロン酸抱合を受け、ごく一部が肝臓でグルクロン酸抱合をうけます。このグルクロン酸抱合体は一旦全身を循環しますが、多くは胆汁中へ排泄され、腸内細菌で脱抱合を受け、再吸収され、腸肝循環をすることがわかっています。ヒトでは11.3%が尿中へ、77.7%が糞中へ排泄されます。もちろん体内分布の大半は小腸粘膜細胞です。
 エゼチミブの効果ですが、通常用量である10mg/日の投与でLDL-コレステロールは18%の低下を示し、従来のインイオン交換樹脂やプラバスタチンなどとほぼ同様の効果を示します。

エゼチミブ:有効性

 本剤の意義は、単剤での効果もありますが、スタチンとの併用がパワフルであることがあげられます。たとえば、欧米のデータですが、アトルバスタチン10mgではLDL-Cは37%の低下であり、その倍量の20mgにしても42%でありますが、エゼチミブとアトルバスタチン10mgの併用では53%もの低下効果が得られるという報告があります。このように、スタチンとの相加的なLDL-C低下効果を有するとともにトリグリセライドについても同様に相加的効果を示します。
 エゼチミブには、特異的な副作用は今のところ認められていません。最も多いのが消化器症状ですが、プラセボとは有意差が認められませんでした。しかし、スタチンとの併用で、肝機能異常が若干多く見られたという報告はあります。また、シンバスタチン40mgとの併用でCK(CPK)が正常の10倍以上に上昇したケースが一例だけ報告されています。新薬であり、しかも体内に吸収される薬剤であるということから、十分な注意は必要ですが、今のところ重大な副作用はないものと思われます。
 本薬剤のターゲット分子であるNPC1L1について触れておきたいと思います。
 Altmannらは、コレステロール吸収に選択的な遺伝子をgenomic-bioinformatics approachという手法でNPC1L1をクローニングしました。すなわち、コレステロール輸送能を有する分子として、(1)膜貫通部分を有し、(2)signal peptideを有し、(3)N-linked glycosylation sites を持ち、(4)またsterol-sensing domainを有するというようにコレステロール反応性を有する分子をコードする遺伝子を選択的にクローニングしていったのです。その結果、ラットの NPC1L1をコレステロール吸収に選択的な分子としてクローニングしたのです。

Niemann-Pick C1L1(NPC1N1)

 ヒトのNPC1L1は13の膜貫通部分を有し細胞外のループの部分にN-linked glycosylation sitesを持ち、sterol-sensing domainを有することが確認されております。分子量は約145kDaであり、糖の結合が高度に認められる膜表面蛋白です。本分子はマウスでは、ほとんどが小腸に存在し、そのほか肝臓や胆嚢にも少量存在するのですが、ヒトでは肝臓にも小腸と同程度に存在することがわかっています。ヒトとマウスやラットとコレステロール代謝の違いが、この分布の違いから説明される可能性も考えられるわけです。
 コレステロールは主として生体内で合成されていますが、その合成はコレステロール吸収により制御されています。その意味でコレステロールの吸収は生体にとって極めて重要であります。また、個々人のコレステロール値には大きなばらつきがあり、これがコレステロール吸収に関連しているという事実が報告されています。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

1 2 3 次項へ