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<スズケンDIアワー> 平成19年7月12日放送内容より スズケン

静脈血栓塞栓症予防薬 フォンダパリヌクス


虎の門病院 副院長
立花 新太郎

icon 静脈血栓塞栓症の予防法

 下肢整形外科手術施行患者に対する静脈血栓塞栓症の予防法は、大きく分けて理学的予防法と薬物的予防法があります。理学的予防法として弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法があり、薬物的予防法としてヘパリンやワルファリン、フォンダパリヌクスがあります。
 2004年4月に肺血栓塞栓症予防管理料が算定されるようになったのがきっかけとなって、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法の使用が広がり、術後の静脈血栓塞栓症の予防が普及しました。日本麻酔科学会による周術期肺塞栓症に関する調査によると、前年と比較して2004年では明らかに肺血栓塞栓症の発生頻度が減少しており、理学的予防法の普及が肺血栓塞栓症の減少に貢献してきたと考えられます。しかし、一方で、肺血栓塞栓症による死亡症例数や死亡率が若干増加していることも観察されています。つまり、周術期肺塞栓症の発生率は全体では減少したものの、死亡率は低下せず、理学的予防法だけでは予防効果に限界があると考えられています。肺血栓塞栓症の死亡率まで低下させるには、その原因となる深部静脈血栓症をさらに低下させる必要があるでしょう。
 薬物的予防法に用いる抗凝固約として、わが国では、未分画ヘパリンやワルファリンが使用されてきました。わが国のVTE予防ガイドラインで推奨されている未分画ヘパリンの使い方は、5,000単位という比較的低用量を1日2〜3回皮下投与する低用量未分画ヘパリン療法とAPTTでモニタリングしながら用量を調節する、用量調節未分画ヘパリン療法の2つの方法があります。前者はモニタリングの必要がなく、出血のリスクも低いというメリットがあります。後者は静脈血栓塞栓症の予防効果がより高いというメリットがあります。
 ワルファリンは、PT-INRでモニタリングしながら投与量を調節するという煩雑さや、効果発現に数日を要するといった問題点はありますが、経口投与できるというメリットがあります。これらの抗凝固剤は、わが国でも臨床経験が豊富で、一定の効果は得られますが、日本人において予防効果をプラセボと比較したデータはなく、投与量、投与開始のタイミング、投与期間を示したエビデンスはありません。
 理学的予防法に比べて、抗凝固療法による薬物的予防法が普及しない原因として、出血性副作用に対する懸念が考えられますが、薬物を投与する上で、有効性、安全性を担保する臨床試験が日本で実施されていなかったことも、抗凝固薬の処方を躊躇させる原因であると考えられます。

icon フォンダパリヌクスの特徴

 今回、新しい抗凝固薬として発売されたフォンダパリヌクスは、合成Xa阻害剤と呼ばれる新規の抗凝固薬で、ヘパリンのように生物由来ではなく、完全化学合成による薬剤で、均一な品質というメリットがあります。また、血液凝固反応で中心的な役割を担うXaを選択的に阻害して血栓形成を抑制します。ご存知のように、血液凝固反応はXaからトロンビン、トロンビンからフィブリンへとねずみ算式に増幅するカスケード反応で、上流のXaを阻害することによって、効率よくトロンビンの産生を抑制し、血栓形成を阻害します。
 また、フォンダパリヌクスは、作用持続時間が長く、2.5mgを1日1回皮下投与することで効果的に血栓形成を抑制し、TKR、THR、股関節骨折手術といった下肢整形外科術後の静脈血栓塞栓症に対して、優れた予防効果を発揮します。
 海外における約7,000例の下肢整形外科手術施行患者を対象にしたPhaseIII試験において、低分子量ヘパリンと比較して、静脈血栓塞栓症を50%低下させることが確認されています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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