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<スズケンDIアワー> 平成19年7月19日放送内容より スズケン

DI実例集(156)手術部における薬剤師の活動


京都薬科大学臨床薬学教育研究センター 教授
山 明

icon 手術部における薬品の管理体制と薬剤師の役割

 本日は手術部における薬剤師の活動と題しまして、私が昨年まで勤めておりました、京大病院での取組みについてお話させていただきます。京大病院では1ヶ月に約450〜500件、1日20数件の手術を行っています。
手術部で使用される医薬品には、麻薬、筋弛緩薬、向精神薬、吸入麻酔薬等、厳密な管理を要求されるものが多数あります。
 ご存知のように2001年に仙台市で筋弛緩薬を使用した事件がありました。これを受け、厚生労働省は直ぐに各医療機関に対して筋弛緩薬の管理の徹底を図るべき通達を出しました。京大病院薬剤部でも全病棟における筋弛緩薬の管理の徹底と、手術部においては筋弛緩薬以外にも一部の向精神薬や吸入麻酔薬の管理を行いました。
当時、手術部での薬品の流れは

  1. 医師(主に研修医)が手術に必要な薬剤を手術部の常備薬薬品保管棚から持ち出す
  2. 筋弛緩薬、麻酔薬は麻酔科スタッフが施錠された薬品棚から持ち出す
  3. 麻薬は麻薬金庫から麻酔科スタッフが持ち出す
  4. 持ち出した薬品の名称と数量、患者名を薬品管理簿に記帳する
  5. 手術室に薬品を搬入する
  6. 手術終了後、薬品を元の保管棚に返却し、返却数量を薬品管理簿に記帳する
  7. 薬剤師は薬品管理簿を基に残数をチェックする
となっていました。

 これまで医師による薬品管理は徹底しており、ほとんど間違いはなかったのですが、それでも年に数回、残数と合わない事例が発生していました。
例えば、手術室からICUに患者さんを搬送する時、返却すべき薬品も一緒に搬送してしまったケースや、薬品を溶解したが使用しなかったので使用量の欄には記入しなかったケース、あるいは薬品管理簿への誤記入等がありました。
 薬剤師は残数と合わない場合、麻酔科スタッフに連絡を取ると同時に、すでに会計に回っている麻酔記録明細書と照合します。正確で当たり前のものを照合するのは大変な労力を要することです。
 これらは返品時に薬剤師が立ち会うか、もしくは患者さんが特定できれば解決できる問題です。薬剤部では麻酔記録明細書との照合など、後追いで、無駄な労力を費やするより、もっと簡単でより確実な管理体制の確立を目指していました。

 一方、病院全体においても医療事故防止に対する関心が高まり、院内安全管理室を中心に様々な取組が行われるようになっていました。
 特に手術部など、職員の出入りが多く、かつ厳密な管理を必要とする薬品を多数使用しているところでは、薬のプロとして、また医師へのダブルチェック機能としての薬剤師の関与が強く望まれました。
 薬剤部でも薬のあるところ、薬剤師在りとのコンセプトを基に、病棟活動をしておりましたので、手術部における薬品管理に薬剤師が積極的にかかわることとしました。そこで手術部と麻酔科、薬剤部が協議した結果、2004年12月よりトレー方式による薬品管理を行うこととしました。

icon トレー方式の実施

 トレー方式とは、手術に必要な薬品を予めトレーにいれておき、更に患者さんを特定するため、トレーの中に薬品使用記録簿を入れたものです。

全身麻酔薬品セット使用記録表

その運用方法は、

  1. 手術前日までに薬剤部はトレーに薬品を充填し、未使用棚に装着する
  2. 医師は、未使用棚から薬品トレーを持ち出し、専用カートにて手術室に薬品を搬入する
  3. トレーに入れてある薬品使用記録簿に患者氏名、医師名を記入する
  4. セット以外の薬品を使用した場合は、薬品使用記録簿に薬品名と数量を記入する
  5. 手術終了後、トレーは使用済み薬品棚に返却する
  6. 使用した薬品の空アンプル、空バイアルは廃棄せず、ピッチャー容器に入れ、トレーと一緒に棚に返却する。使用量が多い場合は、ピッチャー容器に患者名を記入しておく。ただし、ピチャーに入りきらない大容量のものに関しては、担当医が責任を持って、薬品使用記録簿に記載する
  7. 薬剤部は回収されたトレーと使用済み空アンプル・空バイアルを確認し、薬品使用記録簿と照合し、会計に提出する
  8. 会計は麻酔記録明細書と薬品使用記録簿と照合し、会計計算を行う

としました。

医薬品トレー

 トレーは全部で5種類用意しました。すなわち基本麻酔セット、硬膜外麻酔セット、心臓外科用セット、肝臓移植用セット、脊椎麻酔用セットとし、各セットに入れる薬品の種類 並びに数量は麻酔科との協議によって決定しました。
 ちなみに基本麻酔セットには17種類の薬品が充填されています。
トレー方式を開始するにあたり、麻薬と筋弛緩薬の取り扱いについて協議しました。
 その結果、麻薬は管理上の問題もあり、トレーには入れない。使用頻度の多いマスキュラックスはトレーの中に5本1組で入れ、空バイアルも確実に回収する。サクシン、ミオブロックは使用頻度が少ないことと、冷所保存であるため、トレーには充填しないとしました。
 トレー方式を採用した当初は 不慣れから来るトラブルもありましたが、1ヶ月に1回開催される、手術部スタッフ会議と手術部会議において、薬剤部からの要望を発信することにより直ぐに改善されました。
 トレー方式を採用した結果、医師は麻酔準備時間が1件につき10分〜15分程短縮されました。また手術中に不足薬品を取りに来る頻度が減少したため、麻酔に専念できるようになりました。当然、盗難を含む 医薬品の管理が徹底されたことが挙げられます。
 一方、薬剤部としては薬品の使用期限チェックが容易なり、在庫管理が徹底されたことと、患者特定が可能となったため、医師との連絡が密になり、麻酔記録明細書との照合など 後追い処理をする必要がなくなったことが挙げられます。
 更に会計では薬品の請求漏れが減少しました。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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