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<スズケンDIアワー> 平成19年8月2日放送内容より スズケン

気管支喘息治療薬(1日1回投与型吸入ステロイド剤)シクレソニド


昭和大学第一内科 教授
足立 満

icon はじめに

 気管支喘息の主な病態は、好酸球やリンパ球を中心とした炎症細胞が引き起こす気道の炎症と気道の狭窄であることが広く知られています。炎症が持続すると、気道上皮細胞などの傷害とそれに続く気道の構造的変化、すなわちリモデリングをもたらします。このリモデリングが喘息の重症化、難治化の成因のひとつと考えられ、早期に吸入ステロイドを導入することによりリモデリングを抑制する可能性があるとの報告がなされています。喘息治療薬には発作治療薬としてレリーバーと呼ばれる短時間作用性吸入β刺激薬と、長期管理のためのコントローラーと呼ばれる薬があります。コントローラー薬の中でも強力な抗炎症作用をもつ吸入ステロイド薬は、喘息の基本的治療薬として位置づけられています。

icon シクレソニドの特徴

 今日は今年(2007年)4月に承認されました新しい吸入ステロイド薬シクレソニドについてお話ししたいと思います。
 現在、わが国ではプロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニドの3種類の吸入ステロイド薬が発売されており、シクレソニドはそれに次ぐ4番目の薬剤となります。吸入ステロイド薬には薬剤のみならず吸入器、デバイスにもさまざまな種類があります。大別してドライパウダーと加圧式エアゾール(pMDIとも呼ばれます)の2種類に分かれます。本剤は噴射剤にHFAという代替フロンを使用したエアゾール剤(pMDI)です。また、シクレソニドは海外ではすでに40カ国以上で承認されており、すでに多くの臨床実績が積まれています。
 新しい吸入ステロイド薬シクレソニドにはいくつかの特徴がありますが、最も大きな特徴は、このお薬が「プロドラッグ」であるという点です。もうひとつの大きな特徴は、成人用としては日本で初めて「1日1回投与」で有効性を示すことが出来、それが認められた吸入ステロイド薬であることです。
 では、プロドラッグとしての特徴について説明いたします。

シクレソニドの構造と代謝経路

 シクレソニドそれ自体はステロイド活性がほとんどありませんが、薬が投入され、患者さんの肺内に到達したときに、そこに存在するエステラーゼという酵素で活性化されます。このとき、この活性体はもとのシクレソニドの約100倍の活性を持つようになり、従来の吸入ステロイド薬とほぼ同じ活性を示すようになります。
 ここで興味深い点は、この活性体への変換が肺の中で行われるということです。先にも申し上げましたように、シクレソニドは肺内でエステラーゼによって活性体に変わりますが、同時にその一部は細胞内にある脂肪酸と結合して「脂肪酸抱合体」を形成します。この「脂肪酸抱合体」は、ステロイド活性を持たずに肺の細胞内に滞留する性質があります。また、同じく興味深いことに、「脂肪酸抱合体」は再び活性体に戻る性質を持っているので、活性体が消費されてその量が少なくなると「脂肪酸抱合体」から活性体が遊離し、再び抗炎症作用を発揮するようになるのです。このようにして、シクレソニドは肺内に長時間にわたりとどまり、臨床的にも1日1回で優れた臨床効果を発揮する、局所活性化型の吸入ステロイドと考えられています。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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