慶應義塾大学麻酔学 教授
武田 純三
はじめに
本日は、今年(2007年)の秋より発売が予定されている、新しい筋弛緩薬 臭化ロクロニウムの話をさせていただきます。筋弛緩薬はその作用機序から脱分極性筋弛緩薬と非脱分極性筋弛緩薬に分けられます。脱分極性筋弛緩薬は筋細胞のアセチルコリン受容体に作用して、持続的に脱分極させ、ナトリウムチャネルの不応期を持続させることにより筋弛緩作用を生じさせます。代表はスキサメトニウムで、アセチルコリンを二つ合わせた構造をしております。臨床での使用量は減ってきていますが、麻酔の導入時の筋弛緩薬としては、依然として有用な薬剤であります。

一方、非脱分極性筋弛緩薬は、神経筋接合部でアセチルコリンとの競合的阻害により、筋弛緩作用を生じます。構造的にアミノステロイド系のパンクロニウムやベクロニウムと、
ベンジルイソキノリン系のアトラクリウム、シスアトラクリウム、ミバクリウムなどがあります。この内、日本で使用できるのはパンクロニウムとベクロニウムのみであります。
本日お話しいたしますロクロニウムは、前者のアミノステロイド系に属する筋弛緩薬で、米国や英国では1994年より臨床使用が始まっており、現在世界88カ国で使われております。日本では諸般の事情から、遅れておりましたが、本年(2007年)7月に製造販売が承認されましたので、本年度中には臨床使用が出来る見込みとなりました。
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