→ 番組表はこちら
→ストリーミング版はこちら
<スズケンDIアワー> 平成19年10月18日放送内容より スズケン

麻酔・気管挿管時筋弛緩薬〜ロクロニウム水和物


慶應義塾大学麻酔学 教授
武田 純三

icon ロクロニウム(rocuronium bromide) の特徴

Rocuronium and Fast Onset

 アミノステロイド系筋弛緩薬は、ED50と作用発現時間との間に負の比例関係があることが知られています。パンクロニウムやベクロニウムのED50は小さいのですが、ロクロニウムのED50は大きいので作用発現時間は他の筋弛緩薬に比べて早く、挿管までの時間が短くて済みます。日本で行った臨床試験でも、0.6mg/kgの投与量で、作用発現までの時間が1分25秒で、ベクロニウムの2分6秒に比べて早く、挿管完了時間もベクロニウムの5分51秒に比べて、ロクロニウムの2分52秒と短くなっています。また、用量依存性に作用発現時間が短くなりますが、スキサメトニウムの作用発現に比べるとまだ遅く、挿管のしやすさもスキサメトニウムの方が優れています。
 ロクロニウムの作用持続時間はベクロニウムに近似して中等度で、用量依存性に延長いたします。ロクロニウムは主に肝臓で取り込まれ、ほとんどが胆汁中に代謝を受けないまま、排泄されます。腎からも排泄されますが、20から30%と報告されています。一部は代謝を受けますが、代謝産物には筋弛緩作用はほとんどなく、また、血中からは検知されない程度の低濃度しか認められません。したがって、腎機能には大きな影響を受けないのですが、肝不全患者では筋弛緩作用の遷延、回復の延長が起こることが報告されております。

繰り返し投与後の持続時間

 ロクロニウムの特徴の一つは、反復投与しても蓄積性がなく、作用持続時間の延長が見られないことです。これは代謝産物がほとんどなく、また代謝産物に作用がないことによるもので、本邦で行った繰り返し投与試験でも、蓄積作用は認められておりません。この特徴は、今までの筋弛緩薬と異なり持続静注投与を可能とするものです。
 筋弛緩薬の循環器系への影響は、ムスカリン受容体遮断作用、節遮断作用、ノルアドレナリン分泌増加作用、ノルアドレナリンuptake抑制作用、ヒスタミン遊離作用などによって引き起こされます。ロクロニウムを0.6 mg/kg、0.9 mg/kg、1.2 mg/kgを投与した報告では、血圧、心拍数ともに群間に差が認められておりませんし、血圧上昇や心拍数の増加も軽度認められているにすぎません。また、血中のヒスタミン濃度を測定した報告では、ロクロニウムによるヒスタミンの遊離作用はないことが確認されています。
 フランスやノルウェーを中心とした欧米の一部の地域で、多くのアナフィラキシーの報告がなされており、日本でのロクロニウムの早期開発の障害の一つとなってきました。しかし、米国での発生頻度が少なく、欧米でもスウェーデンなどでの発生頻度が少ないことが報告されております。特定の地域で頻度が高いのは、関心が高いので報告が多いのか、地域性があるのか、またロクロニウムで特に多いのか或いは使用頻度が高いためか、などについても、まだ結論が付いていない状態にあります。近年、ノルウェーで使われている咳止めシロップにフォルコダインpholcodineが含まれていますが、スウェーデンで使われているシロップにはフォルコダインが入っていないことから、フォルコダインによる交差アレルギーが原因とする報告がなされております。
 ロクロニウムは水溶液で安定しているので、水溶液製剤として利用することができます。挿管時には0.6〜0.9 mg/kg、追加ボーラスによる維持には0.1〜0.2 mg/kg、持続注入初期の投与速度は7μg/kg/minが日本人での通常用量と考えられます。

ロクロニウムとベクロニウムの比較

 理想的な筋弛緩薬として、非脱分極性筋弛緩薬であること、作用発現が早いこと、持続時間が短いこと、蓄積性がないこと、代謝産物に作用がないこと、ヒスタミン遊離作用がないこと、自律神経作用がないこと、循環への影響がないこと、肝、腎の影響を受けないこと、アレルギー反応を起こさないことなどの特徴があげられています。ロクロニウムは非脱分極性筋弛緩薬であり、スキサメトニウムにまでは至っていませんが作用発現が速くなっています。また、蓄積作用がなく代謝産物に作用がないこと、循環器系、自律神経系への作用がないこと、ヒスタミン遊離作用がないこと、腎の影響を受けないことなど、理想的筋弛緩薬に一歩近づいた薬剤といえます。また、持続注入ができることや、溶液中で安定しているため水溶液製剤として供給されることも特徴といえます。しかし、作用持続時間は中等度で、より一層短時間作用型の筋弛緩薬が求められることや、アナフィラキシー反応も報告されており、今後の課題として残されております。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

前項へ 1 2 3 次項へ