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<スズケンDIアワー> 平成19年11月1日放送内容より スズケン

骨転移疼痛緩和治療薬 塩化ストロンチウム89


癌研有明病院 副院長
山下 孝

 平成19年7月31日に厚生労働省より海外からの輸入承認が認められ、今年中には発売予定となる塩化ストロンチウム89(薬品名メタストロン)についてご説明いたします。
 この治療法は10年以上前から臨床試験を行い、使用申請してきてやっと認可された治療法ですので、安全に十分配慮して治療が行なわれる必要があります。その適正使用のマニュアルも完成しつつあります。また、適正使用講習会も行なわれることになっています。
 今日の話は大きく分けて、塩化ストロンチウム89の概要と安全管理の話です。この薬は放射線を用いて治療する特徴から放射線安全管理が必要となっております。

icon 塩化ストロンチウム89の特徴

本剤の特徴

 骨転移部位に集積し、 Sr-89から放出されるβ線により疼痛を緩和すると考えられています。使用にあたっては、骨転移の疼痛に対する他の治療法でコントロールが不十分な患者のみに使用します。また骨シンチグラフィで、疼痛部位に一致する集積増加がある患者のみに使用します。
 まず、作用機序ですが、

  1. Sr-89は半減期50.5日、カルシウムの同族体でして、Ca代謝が亢進した骨転移部位に集積し、 転移病巣を照射します。
  2. 骨転移病巣を選択的に照射するため、正常骨髄への放射線の影響は、比較的少ないことが特徴のひとつです。
  3. 単回静脈内投与で、全身の骨転移部位を照射するため、多発性骨転移に特に有効であります。
  4. わが国の臨床試験で、投与された患者の32例/69例に疼痛緩和・鎮痛薬減量効果およびQOLの改善が見られています。
  5. 通常、投与後1〜2週から効果が見られ、数ヶ月間の持続が期待できると考えられています。しかし、延命効果、抗腫瘍効果はまだ実証されていません。
  6. 本剤の主な副作用は骨髄抑制で、一時的な疼痛の増強(通常、数日内に改善)、骨髄抑制(血小板や白血球の減少)が起こりますが、臨床上問題となる自他覚的な副作用はありません。

 再投与では、前回の投与から3ヵ月以上の間隔をとり、かつ骨髄機能の回復を確認することが必要であります。また、費用はまだ決まっていませんが、海外では1回あたり、30〜40万円くらいだそうです。
 製造販売後一定の症例に係るデータが蓄積されるまでの期間、全例調査を実施することが今回の承認条件として付されましたので、各病院との契約が必須となり、調査担当医師を決定し、本剤の投与を予定した症例について、登録を行うことになりました。
 重点調査事項は3つ有り、一番目は骨髄抑制についてであり、これは治験時3ヵ月までのfollowであり回復を評価するには、長期のfollowにより評価する必要があるためです。2番目は二次性悪性腫瘍についてであり、本剤の作用機序より二次性の発ガンのリスクがあるとの判断から調査項目に含まれました。3番目はビスホスホン酸併用例についてはビスホスホン酸との併用について、現時点で特に注意を要するものではありませんが、併用したケースでの情報が不足していることから、調査を行うことになりました。

icon 塩化ストロンチウム89の作用機序

骨転移部位でのメタストロンの集積・疼痛緩和機序

 ストロンチウム89は、Caの同族体(アルカリ土類金属)でありまして、転移性病変部周辺における造骨活性の結果として生じるコラーゲンのミネラル化に依存しCaと同様に造骨活性を示す転移性骨腫瘍に集積し、保持されると考えられています。
 塩化ストロンチウム(89Sr)は、程度を問わず造骨反応を示す転移性骨腫瘍に集積すると考えられ造骨型骨転移に限って取込まれるものではありません。
 ストロンチウム89の放出エネルギーは、組織中の飛程は平均2.4mm(最大8mm)であり照射される領域が小さいため、ストロンチウム89は集積する骨の転移部位を選択的に照射し、正常な骨・軟部組織を傷つけることが少なく、また骨髄への照射効果は最小限であります。一方、骨転移部に保持されないストロンチウム89は尿から排泄されることによって、他の臓器及び組織への照射もまた最小限に抑えられることになります。したがって、疼痛緩和効果は、β線粒子そのものの放射線治療効果によるものであると考えられています。

骨転移部及び健常部におけるストロンチウムの動態

 さて、骨転移には大きく分けて造骨型、溶骨型、混合型の3タイプがあり、それぞれ破骨活性と造骨活性のバランスにより分けられ造骨型の骨転移を生じる代表としては前立腺癌、溶骨型では肺癌、混合型には乳癌などがあります。メタストロンを投与される患者さんには必ず骨シンチにて疼痛部位に一致して陽性像を示すことを確認することが必要です。
 また、長期にわたり塩化ストロンチウム89が転移病巣に残って放射線照射が行われ、正常組織に比べて10倍の差が有ることが分かっています。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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