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<スズケンDIアワー> 平成19年11月15日放送内容より スズケン

エストラジオール ゲル製剤


東京女子医科大学産婦人科 主任教授
太田 博明

icon はじめに

 今日お話させていただくエストラジオールは、女性ホルモンの主体をなす卵胞ホルモンであるエストロゲンの3種のうち、もっとも生物活性の強いエストロゲンのことであります。また、このエストラジオールの投与法として、細粒化すると経口投与ができますが、わが国には導入されておらず、専らテープ剤、あるいはパッチ剤と呼ばれる経皮投与が従来なされてきました。しかしこの度ゲル剤が使用可能となりました。このゲル剤はヨーロッパからの導入品で、日本では約10年をかけて、日本人閉経後女性に有効であり、かつ安全であるという確認がなされた上で、製造承認がおり、薬価収載され、ディビゲルという商品名で今月発売されることになっています。
 そこで、本日は今まで聞き慣れない、女性ホルモンのゲル剤とは、どのようなものかについて、その特徴と用途につきまして、閉経後女性に対するHRTの位置付けなどを含めてお話させていただきます。

icon閉経後女性に対するHRTの位置付け

 閉経後女性の女性ホルモン量は閉経前に比べて、エストロゲン量が1/10となり、しかも生物活性の強いエストラジオールと生物活性の弱いエストロンの比率が逆転し、生物活性自体も1/10となります。そして、驚くべき事に閉経後女性のエストロゲン量は同世代の男性に比して1/2となります。つまり、閉経後には女性の方が男性よりも女性ホルモンの量が少なく、1/2以下になってしまうのです。閉経前までは女性の守護神ともいわれるように各種疾患や病態の発生を抑制してきた女性ホルモンが、急激に低下し、守護神としての働きを失うことにより、閉経後の女性の人世には少なからずdisadvantageが生じることとなるわけです。そこで、生体内で産生されなくなった女性ホルモンであるエストロゲンを外部からいろいろな方法で補充する、ホルモン補充療法(hormone replacement therapy :HRT)は極めて合目的であり、閉経後女性にとって、健康の維持や増進、さらにはQOL向上にと万能薬的にもてはやされ、一世を風靡してきました。HRTを使用すると永遠に女性である「Feminine Forever」とまで言われ、1980年代から1990年代後半まで、特に米国では約600万人、HRT対象者の約40%の女性が使用されていたといわれるほどでした。
 ところが、HRTにもいろいろと弊害があり、乳がんがどうも増えるようであるとか、静脈系の血栓塞栓症が増えるなど、以前から危惧されておりましたが、それらが真実であるのか、そしてどの位のものであるのか、またHRTには各種の効能があるとされていましたが、それらがどこまで真実で、どの位の効能かなど、閉経後女性の疾病と病態に対する効果を改めて検証しようとNIH(米国国立衛生研究所)の主導による国家的事業として、Women’s  Health Initiative(WHI)試験が20世紀後半から行われてきました。そして、2002年7月にWHIの中間報告が発表され、HRTの効果は認めつつも、その総合評価においてHRTは有効性よりもリスクの方が高いとの結論に達し、中止されるに至りました。この中止報告はマスメディアを通じて全世界に配信されたために、HRTに対する期待や評価は瞬く間に後退する事態となりました。その後のサブ解析結果や新しい報告が出されるにつれ、WHIの結果を直ちに他の集団に当てはめることは妥当でないといわれるようになってきたことも事実であります。
 しかしながら、基本的にはHRTの効能は、hot flushesといわれる、のぼせ、ほてり、発汗などの血管運動神経症状と、膣粘膜の萎縮によって生じる萎縮性膣炎と、骨粗鬆症およびその合併症である骨折の3つとされております。
 さらに、閉経後間もない比較的若い女性達にはWHI試験の好ましくない結果とは違うことがその後判明しつつあり、HRTの導入時期が重要であることから、「Timing does matter」といわれはじめております。このことを実証すべく、米国ではKEEPSとELITEという2つの研究が実践中であります。
 またWHIを通して、HRTは低用量で短期間にしかも経皮投与が好ましいといわれはじめております。なお、本日お話するゲル剤も経皮投与の1つです。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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