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<スズケンDIアワー> 平成20年1月3日放送内容より スズケン

第34回日本小児臨床薬理学会から


崇城大学薬学部薬物治療学 教授
松倉 誠

icon シンポジウムから

 小児での薬物治療に関しましては、長年の懸案であり、当学会の年余にわたる最大の課題でもあります、off labelの問題、つまり小児での適応外使用の問題があります。子どもに実際、臨床上使用されている薬物の添付文書に、小児における適応の記載がなく、「小児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)」、つまり子どもにおける安全な薬物療法が保証されていない薬剤が、多数存在するという問題です。欧米では、ここ十数年の間に確実に、off labelの問題を解決しつつあります。アメリカ前大統領のクリントン氏が「アメリカでこどもの薬物療法が安全に行われていない事は、許される事ではない」と発言した事もあり、米国ではこの問題を解決するために、小児病院のネットワークが盛んに活動しております。しかし、日本ではなかなか遅々として進まず、臨床的に小児で使用される可能性のある新薬でさえ、本来であれば成人と平行して実施されるべき小児での治験が十分に進んでいるとは言えない状況です。
 シンポジウム1では国立成育医療センター薬剤部の石川洋一先生と昭和大学病院薬剤部長の村山純一郎先生の座長のもと「適応外使用改善への取り組み -さらなる協力体制を考える-」と題しまして、現状報告と今後の方向性を話し合いました。「厚生労働省各検討会の進捗状況と方向性」と題して、東京女子医科大学小児科大澤真木子教授、「日本小児科学会薬事委員会と厚生労働省の取り組み」と題して、香川大学医学部小児科伊藤進教授、「小児薬物療法ネットワークの取り組み」と題して、国立成育医療センター薬剤部の櫛田賢次薬剤部長にそれぞれ御講演を頂きました。本学会を中心とした推進運動により、日本での一層の取り組みが必要であり、製薬企業への更なる特許期間の延長などのインセンティブが必要なことと、次に述べます臨床研究のインフラ整備が欠かせないこと、インフラ整備の為に厚生労働省を始めとした各方面への働きかけが、今一層必要である事などが確認されました。
 シンポジウム2では国立成育医療センター治験管理室室長の中村秀文先生と東京都立清瀬小児病院副院長の本田雅敬先生の座長のもと「臨床研究の現状と今後-個人レベルの研究から多施設臨床研究まで-」と題し、3名の演者に御講演いただきました。生物統計学の東京大学医学部教授の大橋靖雄先生、厚生労働省治験推進室の林憲一殿、ミトコンドリア病の薬物治療を研究しておられる久留米大学医学部小児科の古賀靖敏先生のそれぞれに、臨床研究でのより高いエビデンスを得る為に何が必要であるか、日本には現在、何が欠けているかを討論して頂きました。医療統計学専門家、コーディネーター等々のインフラ整備を充実していく事が欠かせないとの認識を再確認しました。臨床研究者が意識を向上させると同時に、小規模研究から大規模研究に至までのものを可能にする、研究資金を獲得できる仕組みづくりも必要であるとの結論でした。

icon 特別講演から

 特別講演1では、「小児期睡眠障害と薬物療法」と題して、熊本大学医学部小児発達学教授の三池輝久先生に、こどもの睡眠の近年の状況についてお話しして頂きました。健全な脳の発達を保証するだけの睡眠を、日本の子ども達は取っていない現状を、過去の日本での状況や、外国の子どもの睡眠と比較して明示して頂きました。社会環境の問題として議論するだけでなく、睡眠障害が重度なこども達には薬物による治療も、必要であることを強調していただきました。

特別講演風景

 特別講演2では、「小児肝移植における免疫抑制療法と課題」と題して、熊本大学医学部小児外科・移植外科教授の猪俣裕紀洋先生に肝移植の歴史、現状、今後の展望についてお話をいただきました。肝移植については、以前は先天性胆道閉鎖症関連の小児における肝移植が主でしたが、最近の小児での移植数は、毎年ほぼ同じであるが、成人での移植が増加している事が報告されました。成人例と小児例では、移植後の免疫抑制剤治療や免疫寛容に違いがあり、小児では比較的良好な予後である事を述べられました。中には、妊娠・出産を無事経験された例も出てきているとの事でした。引き続いて小児での移植医療に関してのシンポジウムを行いました。血液、腎臓の専門家による講演に続き、熊本大学病院薬剤部、藤井淳子先生に、TDMを始めとした薬剤師の果たす役割について講演をいただきました。今後のチーム医療の一つの典型例として、非常に興味深いお話でした。

 

提供 : 株式会社スズケン

    

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