帝京大学 名誉教授
清水 直容
はじめに
医薬品の添付文書に書かれている症候群についてのシリーズのお話で、pseudoaldosteronism(偽のアルドステロン症)のお話をさせていただきます。
アルドステロン症というのは1955年、Conn先生が初めて副腎の腫瘍で高血圧と低カリウム血症を起すという報告をされて、コーン症候群とも呼ばれます。また、その2年後には新潟におられました鳥飼先生が日本で初めて、同じ腫瘍を発見・報告されております。

本日のお話は、その「偽物」ということでしてアルドステロンは高くないのに、高血圧と低カリウム血症を起すものです。その主な医薬品はlicorice(甘草)で、その成分はグリチルリチンです。甘草は中国北方に見られる、成長すると高さ1mくらいになる植物ですが、その根から甘いものが採れいろいろなものに使用されています。昔はお菓子にもたくさん入っておりました。それを多く摂取しますと、なぜ低カリウムと高血圧になるかというお話になるわけで、その病態がはっきり致しましたので、後ほど触れさせていただこうと思います。
添付文書の中のアルドステロン

医薬品としては、添付文書の中にその重篤な副作用などとして書かれている商品は2,400品種もありますが、成分としては400種くらいです。その大部分は漢方製剤の中にあります。漢方製剤は、薬効分類では520ですが、その他に生薬(薬効分類510)の分類の中にもこの甘草が含まれているものが多いわけです。患者さんの訴えで手足がだるいとかしびれる、突っ張る、力が抜ける、こむら返りがある、筋肉が痛むなど、これらは全部、低カリウム血症によるものです。もともとカリウムというのは細胞の中に入っているものです。また、アルドステロンは、一般的には、ミネラロコルチコイド、鉱質ステロイドですが、それではないけれども、腎臓で、ある物質が同じ作用を持ち、その受容体に結合すると尿中へのカリウムが増え、ナトリウムが吸収されて体内に入り、それが高血圧の原因になるわけです。
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