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<スズケンDIアワー> 平成20年2月7日放送内容より スズケン

DI実例集:漢方薬−漢方薬の基礎知識


東京女子医科大学病院薬剤部 副師長
内田 智美

icon 生薬・漢方製剤の副作用

 漢方製剤は従来重篤な副作用の頻度は少ないと考えられていましたが、1991年に「小柴胡湯による間質性肺炎」で死亡例が報告されて以来、副作用・相互作用に対する関心は高まりつつあるが、まだ一般の人に十分認識されているとは言えない。そのため漢方製剤を処方する際には、起こりうる副作用・相互作用について認識し、患者への説明を十分に行う必要がある。

生薬の副作用と生薬を含む代表的な漢方製剤@

 副作用には、間質性肺炎以外にも、過敏症、肝機能障害、黄疸、排尿障害、偽アルドステロン症、ミオパシー、消化器症状、自律神経系症状などがある。
 間質性肺炎以外には、甘草配合方剤における偽アルドステロン症がある。甘草を構成生薬とする漢方方剤は多く、この種の方剤の連用によって低カリウム血症、浮腫、血圧上昇等の偽アルドステロン症を呈する場合があり、服用開始後2〜3週間で現れることが多い。従って漢方製剤の使用開始にあたっては、あらかじめ体重、血圧、血清電解質を測定し、浮腫の有無をチェックし、少なくとも2週後、4週後に経過を観察する。血清カリウム値の低下を見過ごしたためにミオパシーを生じたとの報告もあるので注意を要する。
 薬剤性肝障害は防風通聖散、柴苓湯、小柴胡湯、黄連解毒湯、大建中湯、乙字湯をはじめ、さまざまな漢方製剤で報告されている。
 麻黄の主成分はエフェドリンであり、交感神経β受容体刺激作用があるため、高血圧症患者に投与する場合は少量から開始して漸増しつつ経過を観察する。
 胃腸障害は胃部不快感、食欲低下を主とするが、これは地黄、麻黄を配合する漢方製剤で起こり、地黄配合の製剤としては四物湯、温清飲、八味地黄丸等がある。
 また、副作用とは言えないかもしれませんが、漢方エキス製剤は生薬の水抽出エキスを乾燥させ、これに賦形剤として乳糖あるいはトウモロコシデンプンを加えて製剤化しているため、乳糖不耐症を体質として有する患者ではこのための腹部膨満感、下痢などを来たすことがあり、乳製品でこのような症状を経験したことがないかを問診することも必要である。

生薬の副作用と生薬を含む代表的な漢方製剤A

icon 生薬・漢方製剤の相互作用

(1)甘草(グリチルリチン酸)
 甘草の主成分のグリチルリチン酸は、尿細管でのカリウム排泄を促進するため、血清カリウム値の低下を促進すると考えられている。このため、グリチルリチン酸およびその塩類を含有する製剤、甘草を含有する製剤は、ループ系利尿剤(一般名;フロセミド・商品名ラシックス®など)、チアジド系利尿剤(一般名;トリクロルメチアジド・商品名フルイトラン®など)との併用により、偽アルドステロン症が現れやすくなる。また、低カリウム血症の結果としてミオパシーが現れやすくなることが知られている。医療用漢方製剤では、甘草を生薬換算した場合、1日量2.5g以上を含むもの、一般用医薬品では甘草1日量1g以上含むもの、あるいはグリチルリチン酸として40mg以上含む製剤が該当し、長期連用への注意が必要とされている。なお甘草による偽アルドステロン症は、血中のグリチルリチン酸が24〜28時間で代謝されるため、服薬を中止することにより、2日以内で速やかに消失すると考えられている。

(2)麻 黄
 麻黄の主成分のエフェドリンが交感神経刺激作用を持つため、麻黄やエフェドリン類を含有する製剤、MAO(モノアミン酸化酵素)阻害剤、カテコールアミン製剤(一般名;エピネフリン・商品名ボスミン®、一般名;イソプロレナリン・商品名プロタノール®)、キサンチン系製剤(一般名;テオフィリン・商品名テオドール®、テオロング®、ユニフィル®、一般名;ジプロフィリン・商品名ネオフィリン®)との併用により、不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身脱力感、精神興奮などが現れやすくなる。

(3)大黄・芒硝
 塩類下剤(一般名;酸化マグネシウムなど)、大腸刺激性下剤(一般名;センナ・商品名プルセジド®、ラキソベロン®、アロエなど)との併用で、作用が増強される。

(4)その他
 漢方製剤のみの併用では大黄・附子・麻黄・石膏・甘草の重複に注意が必要と考えられる。また、漢方製剤と民間薬、あるいは健康食品との併用により、同一生薬の過量摂取が副作用の原因となり得る。とくに甘草は甘味料としても多くの食品に多用されており、過量摂取となる可能性があります。
 また薬効成分以外でも、肝不全用経口栄養剤のアミノレバン®ENの甘味料として使用されているグルチルリチン酸と小柴胡湯の併用による浮腫の発現なども報告されている。
 ほとんどの西洋薬は漢方薬と併用しても問題はないが、生薬成分のタンニンと鉄剤、石膏・龍骨・牡蠣・滑石などに含まれるCaやMgとテトラサイクリン系・ニューキノロン系抗菌薬の併用による難吸収性のキレート生成による抗菌薬の吸収阻害、膠飴とα-グルコシダーゼ阻害薬の併用による腹部膨満感の増悪などの相互作用が考えられるため、できれば漢方製剤を食間に、西洋薬を食後に服用するなど同時に服用しないように注意する。また抗生物質の服用中は、腸内細菌の減少、死滅により配糖体などの生薬成分の分解、吸収に影響が出る可能性も指摘されている。
 添付文書に併用禁忌の記載のある漢方製剤は小柴胡湯のみで、間質性肺炎が発現することがあるためインターフェロンα・β製剤との併用は禁忌である。

提供 : 株式会社スズケン

    

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