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<スズケンDIアワー> 平成20年2月21日放送内容より スズケン

子宮内膜症治療薬 ジエノゲスト


東京大学大学院 女性診療科・産科 教授
武谷 雄二

icon はじめに

 本日は新しい経口の子宮内膜症治療薬ジェノゲスト(商品名:ジエナゲスト錠)についてご説明いたします。ジエノゲストは昨年の10月19日に子宮内膜症治療薬として承認され、2008年1月に発売されました。

ジエノゲストの化学構造

 ジエナゲストの成分はジエノゲストというプロゲスチンであります。これは19ノルテストステロンの誘導体で低用量ピルに使われているノルエチステロンの類似化合物ですが、17位のエチリル基をはずしシアのメチル基を導入することで、アンドロゲン作用をなくしつつ子宮内膜に対する活性が強いという特徴を有しております。これは第四世代のプロゲスチンに分類されます。

icon 子宮内膜症の病態

 子宮内膜症は生殖年齢にある女性の5〜10%に発症すると言われています。近年の少子化に加えて診断技術、医師及び患者の関心の向上により治療対象となる子宮内膜症患者数が上昇しています。国内で子宮内膜症治療を受けておられる方は約13万人で、25歳〜39歳の患者がもっとも多く、未受診患者も含めると、その数は200万人にのぼると推定されています。子宮内膜症は強い月経困難症や月経以外の時期にも慢性的な骨盤痛や性交痛、排便痛などの症状により女性のQOLを著しく低下させます。また、不妊症の原因となり少子化への対策としても本疾患の予防治療は現代社会において極めて重要な問題と言えます。子宮内膜症は保存手術や薬物療法を行っても、再発あるいは再燃を繰り返すことが多く難治性の疾患と言えます。したがって長期的に管理ができ効果の高い安全な子宮内膜症治療薬が求められてきました。一定以上の大きさのチョコレート嚢胞のある場合を除いて子宮内膜症は薬物療法が主たる治療法となっています。特に月経痛で悩んでおられる場合にはNSAIDsがよく使われています。鎮痛薬を用いても日常生活に支障をきたす例がかなり存在し、その場合には低用量ピルを用いることもあります。

icon 子宮内膜症の治療

 従来の子宮内膜症治療薬としてはGnRHアゴニストとダナゾールがあります。GnRHアゴニストは下垂体に作用し、下垂体由来の卵巣刺激ホルモンであるゴナドトロピンの分泌を抑制します。これにより子宮内膜症の増悪因子であるエストロゲンの産生を抑制し、また月経周期に応じた子宮内膜または子宮内膜症のダイナミックな変化を抑え、子宮内膜症の病巣の萎縮効果と和痛作用をもたらします。GnRHアゴニストは病巣の縮小や疼痛軽減という点で大変有効ですが、エストロゲンの低下により骨塩量の減少やホットフラッシュなどの閉経様症状が現れ、時にコンプライアンスの低下をきたす方がおられます。また低エストロゲンによる骨への影響を考慮し、投与期間は6ヶ月に制限されています。このように子宮内膜症治療においてエストロゲンを低下させるほど効果は高まりますが、低エストロゲンによる副作用が強まるというジレンマがあります。ダナゾールは内膜症組織に直接的に作用し、内膜症を萎縮させると考えられています。また卵巣機能も抑制し、その結果、排卵や月経がなくなり痛みも抑制されます。しかし若干のアンドロゲン作用があり、声質の低下、瘡、多毛、体重増加、肝機能障害などの副作用があり、4ヶ月間の投与に限定されています。
 内膜症は妊娠により軽快し、その理由は黄体ホルモンの作用と考えられています。このことにヒントを得て、偽妊娠療法といって妊娠と似たホルモン環境を人為的に作る治療法が行われています。具体的には合成黄体ホルモン製剤であるプロジェスチンまたはエストロゲンを併用する方法です。日本ではプロジェスチンはほとんど使用されていませんが、欧州やアメリカでは今でもプロジェスチンがよく使用され、その有用性は確立されたものであります。従来用いられたプロジェスチンの用量は概して高いものであります。その理由として子宮内膜症組織はプロゲステロン受容体が少なく、ホルモン感受性が鈍いため一定の治療効果を得るには高用量のプロジェスチンが必要と考えられるためです。高用量のプロジェスチンは痛みの緩和という点でGnRHアゴニストやダナゾール等と変わらず、忍容性が高いとされています。

 

提供 : 株式会社スズケン

      

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