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<スズケンDIアワー> 平成20年4月17日放送内容より スズケン

抗血栓薬 エノキサパリンナトリウム


三重大学附属病院血栓・止血異常症診療センター センター長
和田 英夫

 三重大学血栓・止血異常症診療センターでは、血栓症の診療、血栓性素因の診断とともに、静脈血栓・塞栓症の発症予防が重要な業務の一つです。本日は、整形外科領域術後の、新しい静脈血栓塞栓症予防薬として、発売される予定の、エノキサパリンについて御紹介させていただきます。エノキサパリンは、従来のヘパリンに比べると、活性化凝固第X因子(以下Xaと略します)の選択性が高いことから、充分な抗血栓作用を発揮でき、かつ出血の副作用が少ないなど、非常に期待されている薬剤です。

icon なぜ静脈血栓症を予防しないといけないか

 下肢に静脈血栓、特に深部静脈に血栓ができると、そこから血栓がはがれて血中を流れ、肺動脈に至って塞栓となり、肺塞栓症を起こします。肺は空気中の酸素と血液中の二酸化炭素を交換する重要な組織で、肺に広範に梗塞が起こると、呼吸困難、心不全、ショックなどの症状から、致死的な状態になります。肺塞栓症は突然発症し、急激に経過する、死亡率が極めて高い病気です。
 静脈血栓塞栓症の手術後の発症頻度ですが、臨床麻酔誌の報告によりますと、手術後1年に350-450件の静脈血栓塞栓症が発症しており、1万例あたりに直すと3.6-4.8人の割合で静脈血栓塞栓症が発症していることになります。それに対して、肺塞栓症の合併は、2002年66例、2003年83例、2004年89例と年々増加してきております。その死亡率も、それぞれ17.9%、18.9%、21.8%と、毎年増加傾向にあります。

THR・THR・股関節骨折におけるDVT発症率

 深部静脈血栓の領域別の発症頻度を述べると、内科領域では入院患者の10〜20%が深部静脈血栓症を発症し、一般外科患者では発症率が15〜40%、脳卒中患者で20〜50%、股関節全置換術、膝関節全置換術、股関節骨折手術などの整形外科手術後40〜60%、脊髄損傷患者で60〜80%です。整形外科手術の絶対数が多いことからも、股関節全置換術、膝関節全置換術、股関節骨折の手術後の静脈血栓症発症予防が、肺塞栓症の発症予防に取って非常に重要になってきます。
 静脈血栓塞栓症発症の予防ですが、従来は弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法などの物理学的方法にて、静脈血栓塞栓症の予防が行われてきましたが、やはり薬物を使わないことから、限界はありました。薬物療法としては、低用量の未分画へパリンやワルファリンなどが使用されてきましたが、出血の副作用などの問題があり、あまり普及していませんでした。近年、エノキサパリンと同様に抗Xa選択性が高いフォンダパリヌクスが承認されていますが、やはり出血の副作用が報告されています。

 

提供 : 株式会社スズケン



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