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<スズケンDIアワー> 平成20年5月1日放送内容より スズケン

腎細胞癌治療薬 ソラフェニブトシル酸塩


九州大学病院泌尿器科 教授
内藤 誠二

icon 腎細胞癌の病態と治療の現況

 本年(2008年)1月25日に、新しい腎細胞がん治療薬、ソラフェニブが承認されました。このソラフェニブは現在、進行腎細胞がん治療の分野で大きな注目を集めている分子標的治療薬です。
 ソラフェニブという薬剤のプロフィールと今回承認に至った国内外での臨床試験成績をご紹介する前に、まず腎細胞がんの概要と、現在の治療体系について少しお話ししたいと思います。
 腎細胞がんは、全ての癌の約2%で、比較的まれながんではありますが、欧米同様本邦においても年々増加の傾向にあります。
 腎細胞がんは、腎の近位尿細管上皮より発生し、50歳以上の比較的高齢の男性に多いがんで、肺・骨・肝・脳・リンパ節等によく転移を起こします。以前は血尿、疼痛、腫瘤が3主徴といわれていましたが、最近はなんら症状なく、検診や他疾患の管理あるいは検索中に腹部超音波検査などで偶然発見される早期癌が多くを占めるようになってきました。しかし、一方では初診時から局所浸潤癌や転移性癌といった進行癌の状態で発見される方も少なくありません。腎細胞癌の治療の基本は転移の有無に関わらず、手術して原発巣を摘除する手術療法ですが、手術不能例や転移例では薬物療法が選択されます。しかし、残念ながら化学療法や放射線療法はほとんど効果が期待できません。そこで、わが国における現在の標準的治療はインターフェロンやインターロイキン2といったサイトカイン療法となっています。ただし、これらの治療の奏効率も15%前後にすぎず、奏効期間も半年から1年と、決して満足できるものではありません。
 近年、VHL症候群患者の約40%の症例では腎に淡明細胞癌が発症することに端を発して、VHL遺伝子は散発性の腎淡明細胞癌においてもその80%以上の症例において、欠損あるいは発現抑制が見られる癌抑制遺伝子であることがわかってきました。
 VHL遺伝子の変異が起こるとVHLタンパク質が正常に機能しなくなり、正常酸素状態下でも低酸素応答性の転写因子であるHIFαの分解が抑制され、蓄積します。その結果、血管新生促進因子や増殖因子が恒常的に産生され続けて、血管新生や細胞増殖が引き起こされます。腎の淡明細胞癌は常にこのような状況にあるものと考えられますので、血管新生や腫瘍増殖に関連する成長因子やシグナル伝達経路をターゲットとした分子標的治療が新たな治療戦略となってきたわけです。

 

提供 : 株式会社スズケン



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