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<スズケンDIアワー> 平成20年5月1日放送内容より スズケン

腎細胞癌治療薬 ソラフェニブトシル酸塩


九州大学病院泌尿器科 教授
内藤 誠二

icon ソラフェニブの作用メカニズム

 今回、承認された分子標的治療薬ソラフェニブは、腫瘍細胞の増殖と血管新生に必要なキナーゼ群であるRAF、VEGFR-2、VEGFR-3、PDGFR-β、KIT、FLT-3そしてRETを阻害するマルチキナーゼ阻害剤です。

ソラフェニブの作用メカニズム

 国内では、第I相臨床試験の結果に基づき、第II相臨床試験が、腎摘除術とサイトカイン療法の治療歴があり、Motzerのリスク分類による低または中等度リスク群の転移性腎細胞がん患者を対象として行なわれました。ソラフェニブの用法用量は欧米の臨床試験と同じで、1回2錠(400mg)を1日2回、朝・夕の投与とされました。

国内第U相臨床試験〜結果:有効性

 登録された131例中、RECIST 評価によるresponse rateは14.7%であり、奏効が得られるまでの期間は平均で72.6日でした。また、72.1%のSDと合わせると86.8%がSD以上と判定されました。また、CR、PR もしくはSDが確認されてから少なくとも28日間効果が持続した症例を表す病勢コントロール率は73.6%でした。また、ITT解析による無増悪生存期間の中央値は32週でした。

     

国内第U相臨床試験〜結果:安全性

 副作用としては、高血圧が131例中36例(27.5%) に認められました。2種類以上の薬物治療を要するグレード3の高血圧は16例(12.2%)でしたが、高血圧クリーゼなど生命を脅かすグレード4の副作用はありませんでした。高血圧の発現は投与開始から6週までの比較的早い時期に集中していました。
 海外の臨床試験においては、投与中止に至った高血圧クリーゼの報告があるため、血圧の推移には十分に注意し、高血圧クリーゼが現れた場合は投与を中止し、専門医による治療を含めた適切な処置が必要です。また、重症化を防ぐために、全ての患者に対し来院時には血圧測定を行うことはもちろんですが、できれば家庭でも毎日血圧を測定していただき、早期の対応を心がけることが必要です。
 皮膚に関する副作用は、手足症候群が131例中72例(55.0%)と、高頻度に認められました。しかしその多くはグレード1または2であり、グレード3は9.2%でした。発現時期は、投与開始6〜9週までの投与初期に集中する傾向が認められています。この手足症候群に対しては、グレードごとの予防法および対症療法が推奨されています。

icon 副作用への対応

 感覚異常、腫れ、日常生活に支障の無い程度の不快感などのグレード1では、開始用量のまま治療が継続可能で、必要に応じて症状緩和のための局所療法を行なえばよいとされています。疼痛を伴ったり、日常生活に支障が出るようになるグレード2以上では副作用の程度に応じて対処を変える必要があります。
 具体的な予防法、対処法としては、手足症候群は角質が肥厚した部位に起こりやすいことが知られているため、尿素やサリチル酸を含む皮膚軟化剤によりそのような箇所の角質処理をあらかじめ行なう、熱いお湯での洗物や温浴は控える、過剰なマッサージなど物理的な刺激を避ける、乾燥を防ぐために保湿クリームを使用する、などが挙げられています。
 炎症がひどい場合は、皮膚科医師の診察を受けた上でステロイド外用剤の処方を行なう必要があります。また、消炎鎮痛剤や抗ヒスタミン剤などによる疼痛や掻痒感の緩和も有効といわれています。
 消化器系の副作用は、下痢が131例中44例(33.6%)、食欲不振が18例(13.7%)にみられていますが、特定の時期に集中する傾向は見られていません。低グレードの消化器症状の場合は対症療法を行ないながら、投与を継続できますが、グレード3以上の場合は一旦休薬し、専門医による治療を含めた適切な処置を行う必要があります。
 臨床検査値異常としては、リパーゼの上昇が131例中73例(55.7%)に、アミラーゼの上昇が50例(38.2%)に認められています。施設基準値上限の2〜5倍と定義されるグレード3以上のリパーゼ上昇の発現頻度は131例中40例(30.5%)でしたが、アミラーゼの上昇は大半がグレード1または2でした。リパーゼとアミラーゼの上昇は、投与開始から3週内に発現する比較的頻度の高い検査値異常ですが、膵炎を反映するものではなく、一過性で症状もないため、多くの場合治療の継続は可能です。しかし、万一、腹痛など、膵炎の兆候が現れた場合は血液・画像検査などによる精査を行い、専門医による治療も含めた適切な対処が必要です。

 

提供 : 株式会社スズケン



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