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<スズケンDIアワー> 平成20年5月8日放送内容より スズケン

ウイルソン病の治療薬 酢酸亜鉛水和物


東邦大学医療センター大橋病院第二小児科 講師
清水 教一

 2008年1月下旬、Wilson病に対する第三の治療薬として、酢酸亜鉛製剤が承認されました。40名近いウイルソン病患者さんのご協力のもと、治験が行なわれ、本薬剤の安全性とWilson病に対する有効性が確認されました。これにより、我が国でウイルソン病に対して使うことができるお薬は、D-ペニシラミン、塩酸トリエンチン、そして酢酸亜鉛の3種類になります。本日は、まずウイルソン病について説明させていただき、その後に亜鉛製剤によるWilson病の治療についてお話いたします。

icon ウイルソン病の病像

Wilson病

 Wilson病は、常染色体劣性遺伝形式をとる先天性銅代謝異常症の代表的疾患です。わが国における発症頻度は出生35,000から45,000人に1人と推定されています。先天性代謝異常症としては比較的発症頻度は高い疾患です。発症年齢は、3歳から50歳代と非常に幅広く分布しています。わが国での発症のピークとなる年齢は10〜11歳頃です。本症の原因遺伝子ATP7Bは13番染色体長腕に存在します。この遺伝子から産生される蛋白は、6個の銅結合部位を持つ膜蛋白であり、P-type ATPaseの一種であると推定されています。この蛋白は、肝臓から胆汁中への銅の排泄、ならびに活性型セルロプラスミンの合成をつかさどっています。このATP7B遺伝子が障害されることによって生じる、肝臓から胆汁中への銅の排泄障害が、Wilson病の病態の中心です。また、肝細胞内における活性型セルロプラスミンの合成も障害されます。肝細胞内に蓄積した銅により肝細胞障害が生じ、さらに血中に放出された銅は、全身諸臓器、とくに大脳基底部、角膜および腎臓などに蓄積し、それらの臓器障害を引き起こします。
 Wilson病の3主徴は、肝硬変、錐体外路症状およびKayser-Fleischer角膜輪です。その他に、腎障害や溶血なども認められます。臨床症状は発症年齢によっても異なり様々ですが、若年者ほど肝障害にて発病することが多くみられます。Wilson病の病型は、肝型、神経型、肝神経型、発症前型ならびに治療維持型に分類されます。肝型は、易疲労性、黄疸など肝機能障害に基づく症状にて発症した症例です。急性あるいは慢性肝炎様症状や肝硬変の病像を呈します。意識障害と溶血を伴い急速に肝不全が進行する劇症肝炎型も全体の約5%にみられます。神経型は、既往および経過中に全く肝症状や肝機能障害がなく。神経症状のみにて発症する症例です。発症年齢は全体的に肝型より遅く、10歳以降に多くみられます。初発症状としては、構音障害が最も多く、歩行障害、羽ばたき振戦、知能障害なども高い頻度にて認められます。他にジストニア、仮性硬化症、精神症状などが出現することもあります。肝神経型は、神経症状と肝症状、肝機能障害が、ともに、あるいは時間差を持って認められる症例です。発症前型は、家族内検索や、他疾患の検索中あるいはWilson病スクリーニングにて症状の出現前に診断された症例を示します。治療維持型とは、いずれの病型においても、治療によりその症状と検査所見が安定している症例を指します。

 

提供 : 株式会社スズケン



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